日本人はサイバー犯罪の怖さを知らなすぎる 21世紀は軍事より情報戦争が主流に

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──国家機関が他国の民間技術を盗んでいく例もあるようですね。

国が民間の技術を盗む例は、私が知るかぎりでは中国だけだ。国がほかの国の政府の情報を盗むのはお互いにしていることで、これはいわば責めないことになっている。問題は国家機関が民間企業の秘密を盗んで、それを自分の国の企業に渡してパクらせていることだ。これはあまりにもフェアでない。今も米中で問題になっているが、中国からすれば、スノーデン事件で明らかになったように、米国はどの面下げてそんなことが言えるのかという態度だ。

弱点を突かれるとひとたまりもない電力自由化

──日本の経済界に対しては電力自由化で警告しています。

電力自由化のサイバー犯罪がらみの問題点は二つある。電力はためておけないので、常時需給のバランスを取らないといけない。それが大きく崩れると、弱いところから将棋倒しに発電機能を失う可能性がある。米国は10年前から「サイバーストーム」と命名した国際演習を敢行しているが、メインは電力への攻撃で、最もやばいと判断している。日本は電力自由化でこれから発・送電が分離される。どうバランスさせるか、仕組みの弱点を突かれるとひとたまりもない。

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もうひとつは戸別に導入されつつあるスマートメーターだ。現状ではサイバー攻撃上非常に弱点があるように見える。もしハッカーが乗っ取って、うそのデータを注入したら、電力バランスが崩れて大変なことになる。それをどういうスキームで守るのか。乗っ取られてもすぐ見破る仕組みを作るには、けっこうおカネがかかる。コスト安にするロジックでどこまでやれるのか。

──サイバーセキュリティは魑魅魍魎の世界?

サイバーセキュリティ基本法はできたが、内閣府だけでその役割を担えるのかどうか。実は国にサイバーセキュリティにおける「消防署」作りを要請している。個々としては、危ないサイトに行かない、不明のファイルは開かない、もしシステムが変だったら、すぐに専門家に相談することだ。遠隔操作もされる。自分は大丈夫とは誰も言えないのが現実だ。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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