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「リスクは向こうからやってくる」
増え続ける海外贈収賄事件
トムソン・ロイター・マーケッツ

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富田 これらの要注意人物を、日本の企業が独自に察知することは容易ではありません。当社では世界を代表する情報企業である強みを生かして、コンプライアンスに関する法規制情報の提供に加え、顧客・取引先、買収相手が法規制に違反していないかを調べるスクリーニング、高リスク人物・企業のリストなどの提供も行っています。

國廣 先ほど、日本企業は無防備で新興国に進出する企業が多いというお話をしました。防衛力を高めるにはさまざまな方法がありますが、さながら情報戦となっている昨今では、情報の質がその成否を左右すると言えます。私は特に、要注意人物リストに興味があります。

贈賄をやめたことで撤退という事態にはならない

富田 海外贈収賄リスクを軽減するコンプライアンス体制を構築し機能させるためには、どこから取り組めばいいのか、悩む企業も多いようです。まずは自社にとって、どこにどのようなリスクがあるのか知ることが大切ですね。

国広総合法律事務所
弁護士
國廣 正
企業の危機管理(クライシス・マネジメント)やリスク管理体制構築(内部統制、コンプライアンス、コーポレートガバナンス)に強い。経済産業省が2015年7月に公表した「外国公務員贈賄防止指針」の作成にも携わっている

國廣 はい。リスクと一口で言っても、進出する国・地域、事業分野、行為類型(許認可を必要とする状況など)の違いにより、その高低があります。「外国公務員贈賄防止指針」でも、リスクベース・アプローチによる対策を適切に行うよう示しています。その前提として、前述したように十分に情報を収集することが必要です。

そして、海外贈収賄防止のコンプライアンス体制を実質的に機能させるためには、経営トップのコミットメントが不可欠です。「当社は不当な要求に決して応じない。そのために商談を失ったり、その国から撤退することになっても担当者の責任は問わない」という強いメッセージを社内に繰り返し発信し続けることが大切なのです。そもそも贈賄をやめたことでビジネスができなくなり、撤退したという企業を私は知りません。企業トップの皆さんには勇気を持って決断していただきたいと思います。

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