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「リスクは向こうからやってくる」
増え続ける海外贈収賄事件
トムソン・ロイター・マーケッツ

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富田 OECD(経済協力開発機構)は2012年、日本の当局が海外贈収賄について積極的な取り締まりを行っていないと勧告しました。国際的圧力も増していますね。

國廣 日本の当局もそれに応え、外国公務員への贈賄処罰を定める不正競争防止法の適用強化のため、各都道府県警で外国公務員贈賄対策担当者を置き、検察も各特別捜査部に担当検察官を置きました。

15年7月には、私も委員として参加した経済産業省の「外国公務員贈賄の防止に関する研究会」から「外国公務員贈賄防止指針」の改訂版も公表されました。これを受けて日本企業でも、今後は海外贈収賄防止のための取り組みが進んでいくでしょう。

自己正当化するのは世界でも日本企業ぐらい

トムソン・ロイター・マーケッツ
代表取締役社長
富田秀夫
共同通信社に入社後、国際金融情報分野を中心に担当し、共同通信マーケッツ営業一部長から、金融システムソリューション会社、金融コンファレンス企画会社代表取締役社長を経て、2012年7月より現職。日本金融監査協会初代事務局長を務めるなど、リスク管理の高度化に長年関与している

富田 トムソン・ロイターは、世界中に張り巡らせたネットワークを通じて、ビジネスプロフェッショナル向けに情報サービスの提供をしていますが、近年企業のGRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)の取り組みを支援する包括的なソリューションにも力を入れています。

海外ではFCPAなどへの規制対応にとどまらず、コンプライアンス体制を機能させるという観点で、組織づくりや人的資源投入を強化している企業が目立っています。大手金融機関ではコンプライアンスに精通した専門家を1000人以上も擁しているところもあります。

それに対して日本の企業では、コンプライアンス部門は総務部や法務部の一部のチームにとどまっているところが少なくありません。

國廣 確かにそのとおりですね。私は、日本企業は「ガラパゴス化」していると危惧しています。

「新興国に賄賂は付きもの」、「みんなやっていること」、「やらなければビジネスにならない」という声を聞くことがあります。ところが、そのような論理で自己正当化しているのは、世界でも日本企業ぐらいです。

企業には「今までやってきたのでやめられない」という意識を捨て、旧来の商習慣と「断絶」することが求められています。日本企業はこれまで、総会屋に対する利益供与や談合・カルテルの摘発強化で「過去との断絶」を求められた経験があります。これに対応した企業と、そうでない企業とで、その後大きな差になりました。

ただ、ここで特筆すべきは、カルテルであれば、自社が決別すると自覚し行動すればリスク回避が可能ですが、贈収賄には、相手があるということです。外国公務員への贈賄の多くは、相手方の政府関係者の不当な要求から始まるのです。すなわち、“リスクが向こうからやってくる”わけです。

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