そこにある「SNSの呪い」に、皆まだ気づかない 潜在的、無意識的にこめられる「悪意」の怖さ

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もちろん、心理戦だから百発百中ではなく、相手がガードしている場合は必ずしも効果を発揮するわけではない。が、少なくともそれで疲弊させることはできる。ぼくは実際に疲弊した。

そういう人々の無意識の悪意に触れて、「これはありふれた社会現象なんだ」と理解しつつも、「どうしてそんな悪意を突きつけられなければならないのか」という被害者意識を抑えることができず、ほとほと疲れてしまった。

よく2ちゃんねるで、疲弊した攻撃対象に対して「効いている効いてる」と表現するが、ぼくは実際に効いてしまった。そうして今では、Twitterもフェイスブックもアカウントこそあるものの、すっかり私的なことはつぶやかなくなったし、写真もあげなくなった。

「呪い復活」と「マスコミ衰退」は表裏一体?

ところで、ぼくは昔から、ぼく個人の問題が社会とリンクするという性質がある。そう考えると、ぼくのこの疲弊も、やがて社会的な問題となる可能性があると思っている。やがて多くの人が、SNSの呪いに心身を疲弊させるようになるということだ。

もちろん、今でもSNSの弊害は叫ばれている。「SNS疲れ」という言葉もある。しかし現状の「SNS疲れ」は、コミュニケーションを強要されることの疎ましさや、設定したキャラを演じ続けることの疲れをいっているのみで、必ずしも「呪い」の効果を指したものではない。

だから、この問題はこれから大きくなっていくのではないか。逆にいえば、まだみんな気づいていないのではないか。

そして、まだみんなが気づいていないからこそ、その呪いは大きな効果を発揮するだろう。ここにおいて、古の失われた風習かと思われていた「呪い」が、現代のSNSという格好の培養器を得て、鮮やかに蘇ったのだ。

この復活劇は、「マスコミの登場と衰退」に大きく関係しているだろう。

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