止まらないユーロ安 欧州危機が日本を襲う

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とはいえ、アジア経由など間接的影響も無視できない。特に中国はEU向け輸出が全輸出の20%近くを占め、景気への打撃が心配される。「すでに中国向けの日本の産業機械の輸出が減速するなど、影響が出始めている」(山田久・日本総研調査部長)。

日本への影響がさらに大きいとみられるのが、金融面からの影響だ。大和総研では、欧州主要金融機関が域内問題国の国債で被る損失度合いに応じて「必要な自己資本額」を計算、その半分を「リスク資産の圧縮」で対応すると仮定して、世界や日本の経済に与える影響を試算している。

それによると、必要自己資本額が12兆円程度(欧州銀行監督機構の算定結果と同程度)の場合、貸出債権などのリスク資産は全世界で7%圧縮され、世界の名目GDPを1・6%、日本の実質GDPを0・6%押し下げる。

もし必要自己資本額が20兆円強(国際通貨基金の推定と同程度)となると、資産圧縮は倍増し、日本のGDPを2・2%下押す。必要自己資本額が30兆円強となれば、日本への影響は4・1%に達する。この最悪のケースでさえ「1割程度の確率で存在する」と、熊丸亮丸・大和総研チーフエコノミストは話す。

しかも、試算には民間部門の不良債権損失の拡大は加味されていない。今後、欧州では景気後退に伴う企業倒産の増大などで銀行の貸出金が大幅に劣化するおそれは強い。それが新たに銀行の資本を侵食し、資産圧縮、景気下押しの悪循環を加速しかねない。

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