日本製品の輸入規制が続く食料品、日本産ブランドの受難

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中国で145店舗を展開する化粧品・健康食品メーカーのファンケルもその一社だ。原発事故後、コラーゲン飲料などの輸出がストップ。在庫も7月にはなくなり、「消費者離れを防ぐため、ディスプレーだけでもと店頭に空き瓶を並べ続けた」(谷川篤志海外営業グループマネジャー)。また、別の大手食品卸の輸出担当者は「震災後、中国の小売店の陳列棚から日本産がすっぽりと抜け落ち、韓国産、台湾産に置き換わってしまった」と嘆く。

12月以降、産地証明書のみで輸出できる食品が中国に到着しつつあるが、ジェトロ農林水産・食品企画課の花田美香課長は「陳列棚のスペースを回復させ、さらにそれを拡大させていくことは非常に難しい」と指摘する。通関に時間を要する可能性もあり、なお予断を許さない。

規制緩和されてもなお残る風評被害

さらに、規制が緩和されても、輸出が回復・拡大するかは未知数だ。「震災直後のような風評被害は収まってきている」という声がある一方、「海外のバイヤーは福島を応援したいと言ってくれるが、実際に発注してくれるかは別」(福島県貿易促進協議会)、「宮城県産はかなり避けられている印象」(宮城県農林水産部)という声も聞かれる。

原発事故で輸出が滞った、ちば醤油は「最終的に購入の判断をするのは消費者。納得できるような説明をきちんとしていくしかない」(杉崎進営業企画部主事)と話す。

ジェトロは20日、農林水産物・食品輸出促進対策本部を発足させた。海外バイヤーとの商談会などの事業規模を倍増させる計画だ。日本産食品のイメージ回復へ官民挙げて動きつつあるが、風評被害という高い壁を乗り越えるのは容易ではない。

■写真:幕張メッセで開かれた千葉県食品輸出促進商談会

(平松さわみ =週刊東洋経済2012年1月28日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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