未踏の野を過ぎて 渡辺京二著

未踏の野を過ぎて 渡辺京二著

『逝きし世の面影』や『黒船前夜』の著者によるエッセー集。書名でもある熊本日日新聞への連載は、どの回も世相風潮を批判し世直しに貢献したいという心情が通底している。不況と経済成長への根源的疑問、世代を超えたしゃべり方(「あげる」の乱用、語尾のはね上げなど)への嫌悪、街路樹剪定から樹木についての思い、反秩序主義批判など。ささいな現象のようでいてどれも時代の貧困を突いて、納得するところが多い。

一方、「前近代は不幸だったか」とするエッセー数編では死、身分制、家業と街並みなど、捨て去られた制度や慣習、考え方に貴重な意味があったと鋭く問題提起している。巻頭の「無常こそわが友」では、大震災に対してメディアや人々が、幕末以来の国難だとか日本は立ち直れるのか、と大騒ぎするのは理解に苦しんだとし、今回の災害ごときで動顛してご先祖様に顔向けできるかと問うている。確かに「万事は今後にかかっている」のだろう。(純)

弦書房 2100円

  

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