これでいいのか待機児童対策 相次ぐ不祥事で判明した企業頼み政策の危うさ

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参入ルールも大幅に緩和する。職員配置基準など一定の要件を満たしていれば、原則としてこども園の指定を行う。一方、事業からの撤退については、継続利用の調整義務など「基本的には『今利用している子ども』への責任を果たしたうえで、事業者の自由意思で撤退可能な仕組みとする」(内閣府作成の資料)。

ただ、規制緩和には慎重であるべきとの意見も少なくない。

検討会議の幼保一体化ワーキングチーム委員を務める普光院亜紀氏(「保育園を考える親の会」代表)は、「こども園については、配当制限や他事業への流用の禁止を含めたルールを設け、指導検査を徹底すべき」と指摘する。親の会のメーリングリスト加入者からは、「保育事業で儲けを出して株主配当に充てることは、即、保育の質の低下につながる」「最低基準ぎりぎりでの運営を求める株主と、子どもや保護者、保育士の利害は一致しない」との意見が出ている。

「企業任せでなく、国や自治体が責任を持って保育を実施する現行制度を充実させることによって、待機児童の解消は可能だ」

こう語るのは保育制度に詳しい村山祐一・帝京大学教授だ。そのための方策として村山氏は、国が保育園の緊急整備計画を策定し、国と自治体の責任で小学校区ごとに一定の数の保育園を設置する方法を提案している。その際、自治体または社会福祉法人による非営利を原則とすべきとしている。村山氏のプランはかつて1970年代に実施された手法であり、70年度からの10年間で認可保育園は7000カ所以上も増加した。

民主党政権は09年の衆議院選挙で「チルドレンファースト」(子どもが第一)を掲げて大勝利した。しかし、看板事業の「新システム」には安普請のイメージが付きまとう。もう一度原点に立ち返って、待機児童対策のあり方を考えるべきではなかろうか。

(岡田広行 =週刊東洋経済2012年1月21日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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