増税路線に隠れみえる国民の大きなふたつの反対理由

増税路線に隠れみえる国民の大きなふたつの反対理由

塩田潮

 野田首相は13日、内閣改造に踏み切った。

直後の世論調査で、岡田副総理起用は「評価」と「期待」が50%を超えたが、内閣支持率はほぼ横ばいだった。政権浮揚の思惑は当て外れだが、人事をめぐる党内対立は顕在化せず、可もなし不可もなしというところだ。

 首相にとってそれ以上に気がかりなのは、「消費税増税反対」が5割を大きく上回ったことだろう(たとえば朝日57%、読売55%)。12月30日決定の増税準備法案の素案で具体的な増税スケジュールが示され、現実味を帯びてきたため、という解説も多い。だが、大手新聞などが増税推進論で足並みを揃えている状況で、反対論が拡大した意味は大きい。

 増税不可避という実態は認めるものの、自由な言論が柱の新聞は多様な論説があっていいのに、ほぼ同じ主張というのも不思議な気がする。なのに、国民の半数以上が増税に異議を唱えている。やはり野田内閣の増税路線はどこかおかしいと感じているのだろう。

 賛成できない理由は、「低所得者の負担増」、「消費低迷による景気悪化の懸念」、「無駄の削減が不徹底」などが高順位だが、それ以上に大きな原因が潜んでいるように思う。

 一つは、増税しても、問題は本質的に解決しないという点がある。消費税率を現行の2倍にしても、財政赤字を膨らませてきた根本の制度や構造を変革しない限り、財政再建は達成できないことに、国民は気付き始めている。だが、野田首相は根本の制度や構造について、実態の十分な説明もせず、変革への不退転の決意も示していない。

 もう一つ、増税による税収増の使い道について、国民は必ずしも信用していない面がある。約束どおり社会保障改革や財政再建に回るのかどうか。無駄を生み出す制度と構造を放置したまま増税すれば、今度も党利党略や官僚機構の省益の思惑で無駄につかわれてしまうのでは、と警戒している。

増税分は一種の社会保障目的税に、という説明だが、約束破りオンパレードの民主党政権が増税に限って約束を守ると言っても、簡単には信用されない。野田首相はこの壁も乗り越えなければならない。国民はそこを凝視している。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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