「脱原発世界会議」2日間で1万1500人が参加、世界各地から核の被害についての報告も

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 ローラン・オルダム氏はタヒチ(フランス領ポリネシア)出身。フランスによる核実験被害者団体「モルロアと私たち」の会長を務める。オルダム氏によれば、フランスは1966年から30年間にモルロア(ムルロア)環礁で計193回の核実験を実施。「海中に生じた穴が崩壊して15~20メートルの津波を引き起こす可能性が指摘されている」(同氏)。
 
 続けて同氏は「これまでフランスでは核の被害を訴える訴訟が約700件も起こされているが、勝訴はわずか2件。ポリネシア住民が勝訴したケースはない」と指摘。「加害者が裁く」裁判の不合理を訴えた。


 続いて登壇した「オーストラリア非核連合」共同代表のピーター・ワッツ氏は、先住民アボリジニー。「出身地ではウラン採掘による環境汚染が深刻で、住民にも多くの健康被害が出ている。オーストラリアで採掘されたウランが東京電力の福島原発で使われていたことを知って大きなショックを受けた」と語った。

 日本の報告者である田部知江子氏は、原爆症認定集団訴訟弁護団に参加する弁護士。「国は原爆症の認定に際して残留放射線や内部被ばくの影響を考慮しておらず、被害が過小評価されてきた」と田部氏は指摘。「集団訴訟での相次ぐ勝訴判決を通じて認定基準の見直しがようやく進みつつある」と語った。


 最後に発言したアンドレアス・ニデッカー氏はスイスの医師で、放射線医学が専門。「核戦争防止国際会議スイス支部長」を務めている。同氏は原子力エネルギーには、「コスト」「安全性」「廃棄物」「水」「放射能」「資源」「安全性」の面で「7つの欠陥」があるとし、「核エネルギーの民生利用はあまりにも危険で高価で時代遅れだ」とした。また、福島原発事故については、「長期的な内部被ばくの影響は甚大なものになりうる。発がんのみならず、心疾患や血管系疾患などさまざまな疾患が懸念される」と語った。

国際会議は15日も開催され、「放射能から子どもを守る」「原発のない東アジアをめざして」「地域発・原発に頼らない社会の作り方」などをテーマとした討論が行われた。
(岡田 広行 =東洋経済オンライン)

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