「山手線の兄弟」がタイで勝ち取った"果実" これがニッポンの鉄道産業が進むべき道だ

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パープルラインに導入される車両は21編成、63両。JR東日本グループの車両メーカー、総合車両製作所(J-TREC)が製造する。モーター類を東芝が製造するほか、変電・配電システムを明電舎が製造する。

信号システムをカナダのボンバルディアが担当するほか、改札・券売機・通信システムはシンガポールのメーカーが製造する。そのため、オールジャパンというわけではない。それでも、丸紅の担当者は「シーメンスの牙城を崩した」と胸を張る。

なぜ日本の車両が採用されたのか

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山手線の新型車両E235系は「サスティナ」の量産型第1号

今回製造されるパープルライン向けの車両は、J-TRECが開発したステンレス車両「サスティナ」をベースにしたものだ。

一般的な鉄道車両は鉄道会社の注文をもとにゼロから車両を作り上げる、いわばオーダーメイド車両である。鉄道車両は数万点にも及ぶ部品から構成されるため、その手間は煩雑を極める。

この負担を軽減させるべく、鉄道メーカー各社はさまざまな取り組みを行っている。たとえば日立製作所は、車両をモジュール化することで部品点数を百数十へと大幅に削減し、「Aトレイン」として展開。東京メトロや西武鉄道など、多くの私鉄で採用されている。

J-TRECのサスティナも、概念はAトレインに似ている。共通プラットフォームを用いた車両をベースに開発することで、コストダウンを図る狙いがある。腐食しないステンレスを素材に使っているため、塗装工程を省略できるというメリットもある。

2013年に東京急行電鉄の5050系で採用されたほか、JR東日本が烏山線や仙石東北ラインに導入した車両も、サスティナをベースに開発されている。今年3月に完成し、秋から営業運転が始まる山手線の新型車両E235系は、サスティナの量産型第1号である。つまり、今回バンコクで走るパープルライン車両は、山手線の新型車両と“兄弟”の関係になるわけだ。

むろん、外国で走る車両なので違う部分は多い。たとえば線路の軌間幅は、山手線が1067ミリメートルなのに対し、パープルラインは1435ミリメートル。集電方式も、山手線はパンタグラフを使って架線から集電するが、パープルラインは走行用のレールのそばに敷いた給電用レールから集電する第三軌条方式だ。

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