シングルマザーには「起業家」という道がある 「不安」は新しい挑戦への強力な原動力だ

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経理とIT、この2つのスキルがあれば怖いものなしだ。仕事はすぐに見つかった。が、大崎さんはあえて正社員での就職は選ばなかった。1社に縛られることを避けるためだ。派遣社員として経理の仕事をしながら、一方でアルバイトやフリーランスとして、パソコンサポートやウェブディレクターなどの仕事に就き、週3日と週2日などで組み合わせた。「小さい子どもは病気しがちです。正社員でも欠勤が続けば解雇される可能性がある。複数の職場で働いていれば、そのうち1つを辞めることになっても、収入がゼロになることがありません」(大崎さん)。

アルバイトながらに大活躍

さまざまな人が集まるオオサカンスペースの様子。イベントや部活動もさかんに開催されている

そんな大崎さんに転機が訪れたのは、ChatWorkとの出会いによってだ。入社当時はアルバイトで、別の仕事と掛け持ちしていた。ところがこの会社での仕事がおもしろく、勤務時間外に自宅でも作業をしてしまうほど夢中になった。

もともとインターネットには強い関心を持っていた。低体重児で生まれた第2子の出産をきっかけに、インターネットで情報収集を試みたものの、検索上位に出てくるのは医学的な文献ばかり。「求めていたのは『大丈夫だよ』という先輩ママの声だったのに、この順番は何だろうと思ったんです」。歯がゆい思いをしたこの経験を、この会社なら生かせるという確信を持った。「ベンチャー企業だったので、つねに新しいことに挑戦できる刺激的な環境で、社員の提案にも柔軟に対応してくれる風土がありました」。

大崎さんの高いモチベーションに応えるように、会社側も在宅勤務制度を新設した。大崎さんの人柄や仕事に対する姿勢はもちろん、次々と出される提案や実行力を高く評価。大崎さんはどんどん仕事を任されるようになり、アルバイトという立場ながら、山本敏行社長に同行して社外の打ち合わせにも参加するようになった。入社から4年後、大崎さんもようやくこの会社1本でやっていくことを決意。社長秘書として正社員になった。

会社が米国で事業展開をすることを決めた際、米国に渡る選択肢もあったが、ここで大崎さんはコワーキングスペースの開設を社長に提案する。専業主婦時代に低体重児を育てる母親を集めたママサークルのホームページを立ち上げたり、アルバイトながら世界27都市で開催される「IT飲み会」を立ち上げたりした経験から、人と人をつなぐおもしろさを知っていた。コワーキングスペースこそ、それを具現化できる事業だと考えたのだ。

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