18歳投票権とネット活用で若年層軽視の政策を正せ

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投票自体をネット上で行うネット投票となると、世界でも実施例はエストニアなどごく一部の小国にとどまっている。しかしその前段階として、ネットを通して有権者と候補者がそれぞれの主張を双方向でぶつけ合うことは、結果的に若年層の投票率上昇につながるはずだ。

確かに、ネットでは「成り済まし」や扇動的な動きへの警戒が必要だ。これに対し、日本経済研究センターは、選挙管理委員会が主体となって有権者へIDを発行、候補者にも公的なサーバーを提供するなど、選管が積極的な対策を講じるべきだ、とする。投票率上昇や啓蒙活動などは選管の重要な使命である。

若年層と高齢層との利害対立は雇用面でも出てきた。厚生労働省は13年度から企業に従業員の65歳までの再雇用を義務づける制度を厳格化する方針を示し、今年の通常国会に高年齢雇用安定法の改正案を提出する見通しだ。これに対し、日本経団連は「高齢者雇用が増加すれば、新卒採用など若者の雇用を阻害しかねない」と反論している。不況の中、高齢者再雇用を増やすために、新卒採用抑制など若年層の雇用にさらにシワ寄せが来る可能性がある。

「国民的議論を」は、今や野田佳彦首相の口癖だ。しかし、その「国民」には政治的プレゼンスの高い団体や高齢者しか入っていないのでは、と疑わざるをえない。

しかしながら、将来を担っていく若年層の声を政治に反映することは、財政健全化など中長期的な政治課題の解決に有効である。そのためにも、18歳投票権とネットなどを活用した双方向型選挙実現への環境作りや法整備が急がれる。

(シニアライター:野津 滋 =週刊東洋経済2012年1月14日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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