ゲイツ氏｢気候変動による食糧危機は防げる｣ 最貧層を救う技術への投資を促進せよ

彼らが必要とするだろうツールの多くは非常に基本的なものだ。より多くの作物を育て、高い収入を得るためいずれにしても必要となるもの、つまり融資、よい種、肥料、研修、そして自らが育てた作物を売れる市場だ。

豊かな国の農家が当然と思っている進歩が上述したような農家で実現すれば、その収穫や収入が2～3倍に増えるのはよくあることだ。手に入れた富により食生活を改善し、自身の田畑に投資し、子供たちを学校に行かせられる。農家を窮地から救い出すことで、仮に不作に見舞われたとしても一定の安心を与えることができる。

予測しなかったような気候変動の脅威も発生するだろう。それらに備えるためには、世界は小規模農家のための種や支援に関する研究を加速しなければならない。

ジグゾーパズルは複雑だが

農家を助けるための革新で最も熱いのは、衛星技術だ。アフリカでは研究者たちが衛星写真を利用して詳細な土壌図を作成している。これにより農家にどのような品種がその土地に適しているかを教えることができる。

農家がこれらのソリューションを利用できるよう、ワンエーカー基金という非営利団体を含むいくつかの組織が方法を模索している。ワンエーカー基金では、20万人以上のアフリカの農家と手を組み、彼らに融資やツール、研修を提供している。20年までに100万人以上の農家に手を差し伸べることを同基金は目指している。

確かに貧しい農家の現実は厳しい。適切な種をまくことから、正しい肥料を使用し、研修を受け、収穫したものを売る場所を確保することまで、それはまるで膨大なピースを有するパズルさながらの複雑さだ。一つでもピースの場所を間違えば、生活がバラバラに崩れてしまうかもしれない。

今彼らが直面する課題と今後直面するであろう課題の両方について、ピースを正しい場所に導く助けとなるものを世界が持っていることを、私は知っている。そして何より、農家自身もそれを持っていることを、私は知っている。

（週刊東洋経済9月19日号）