日本人が忘れている「女性蔑視」本当の歴史 不適切発言への批判は過剰反応じゃない

✎ 1〜 ✎ 23 ✎ 24 ✎ 25 ✎ 最新
拡大
縮小

さらにすごいのは、インタビューに答えている職業紹介所の責任者のコメント。「昔は職業婦人といへば皆醜かつたものです」。これは、職業紹介所にやってくる女性も読んでいるはずではないだろうか。

さらには「(雇い主が何を求めるかというと)才能の順でも健康の順でもなく、美人の順に売れてゆくことになりました。(中略)困ったことですが事實であつて見れば致し方ありません」。彼はリアリストなのか、それとも時代の代弁者なのかはわからない。しかし、就職の決まらなかった女性が、この記事を見てどう思ったのだろう、とは思う。

あまりに酷かった日本の過去(官公庁編)

これは一部の男性だけに見られた傾向なのだろうか。最後にもうひとつ紹介したい。これは、私の愛読している鬼才・パオロ・マッツァリーノ先生も新刊の『「昔はよかった」病』で紹介している記事だ。

それは、読売新聞1929年2月6日の朝刊にある「美人に限って文部省が採用」という苦笑しかできないタイトルの記事。官公庁も(ある意味、正直すぎる)女性差別的表現を使用していたのは驚きで、「お嫁の賣れ口もよく殊に美人と一緒に机を並べて働く事は男子側の能率を増進せしむる上に頗る効果があるといふ議論が一般に髙い所から今度新に左記の如き採用方針」を掲げるという。それが「一、頗る付の美人たる事」だそうだ……。

繰り返すものの、今回も解説はやめておこう。

こういった時代と比較すると、なんだかんだ言っても現代日本はよい方向に行っているように思う。これらが、息苦しいかもしれない現代の風潮を、筆者が肯定したい理由でもある。

最後に男性に問いたい。もし今回、筆者が引用した記事について笑ってしまった人がいるとすれば、だ。私たちは、「思っているけど言わなくなっただけ」なのだろうか。それとも「女性軽視など、考えもつかない、思いもしない」メンタリティを獲得したのだろうか。(*なお、文中ではできる限り旧字体を使用したが、一部、使用しなかったところがある)

坂口 孝則 調達・購買業務コンサルタント、講演家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さかぐち たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。著作26冊。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。日本テレビ「スッキリ!!」等コメンテーター。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT