大王製紙と北越紀州、再びバトルに着火 資本関係をめぐって対立が先鋭化

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市場が大王のCBを否定的にとらえたポイントは、「希薄化」と「転換価格」だろう。

そもそもCBとは、発行時に決めた転換価額で株式に転換できる、権利付きの社債をいう。今回の大王CBだと、転換価額1443円に対し、仮に株価が1700円に値上がりした場合、投資家はCBを株式に転換して売却すれば257円の売却益を得る。株価が値上がりしない場合は転換せずに保有し続ければ、普通の社債のように毎年一定の利払いがあり、満期には額面金額が償還される(ただし今回の大王CBはゼロ・クーポンのため利払いがない)。

この株式転換時に起きるのが希薄化だ。大王の場合、直近の発行済み株式は1億4934万株で、CBが全部、新株に転換されると2079万株増える。計算上、大王の1株当たり純利益や純資産は、14%希薄化される。転換請求には、会社が自ら保有する自己株も充てられるが、大王本体で保有する自己株は291万株。ほとんどに新株発行で応じるしかない。

通常の新株発行とは違い、CB発行は直ちには希薄化につながらない。CBの転換価額は、直近の株価終値から20%前後高く決められることが多く、株式転換が一気には進まないからだ。

ところが、今回のCBの転換価額は、直近終値1429円に、わずか14円を乗せた1443円に設定された。低めの転換価額が株式転換と希薄化を早めるのではないかとの憶測から、大王の株価が急落したことで、皮肉にも転換価額1443円の“目標”からは遠ざかった。

CB転換進めば、大王は持ち株会社から外れる

実は北越紀州にとって、今回のCBには、もう一つ、大きな痛手となる要素がある。大王が持ち分会社から外れるというリスクだ。

北越紀州が保有する大王の株は直近で3170万株。発行済み株式1億4934万株に対する持ち株比率は21%となる。企業会計基準では、議決権ベースで20%以上50%以下の株を保有する場合は持ち分会社として、純利益を持ち株比率に応じ連結決算の営業外収支に取り込める。

大王の2014年度の純利益は132億円。その2割強の30億円弱が、北越紀州の営業外収支に持ち分法投資利益として計上され、経常利益を押し上げている。持ち分法投資利益には法人税負担がないため、純利益も同額押し上げられる。つまり、前期の北越紀州の純利益83億円のうち3分の1が、持ち分会社の大王の寄与分なのだ。

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