三越と松屋、銀座店改装に見る「紳士服の今」 日本一の商業地で百貨店が出した答え

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松屋の「レザークラフトマン」では職人が革小物の製作を実演(撮影:今井康一)

牽引役として期待されているのが松屋オリジナルブランドである「アトリエメイド」だ。同社のカリスマバイヤーである宮崎俊一氏が、英国、日本、イタリアなどから1960年~1980年頃に作られた年代物の高級ヴィンテージ生地を調達。こうした生地は後継者不足などの理由で閉店を余儀なくされた街のテーラーが大切に保管していたもので、宮崎氏のネットワークと交渉力を駆使して買い取った。

「現在の生地は高速織機で効率的に作られているが、ヴィンテージ生地は手間をかけて作られており、耐久性と風合いが違う」と宮崎氏。当時からの物価上昇分を換算すると現在では数十万円程度の価値に跳ね上がるものもある。しかし、1点1点を直接買い付けることで調達コストを削減。こうした生地を長崎の契約工場で仕立てたうえで、7万5000円から13万円程度の価格帯に抑えることが可能になったという。

既製服売場の面積を3割減らし、その空いたスペースに新たに登場したのが、革小物やバッグなどの雑貨品を扱う「レザークラフトマン」だ。東京や大阪などで工房を構える腕利き職人が展開する6ブランドが結集。週末には職人が店頭でミシンを使って縫製を実演する。客は革やステッチの色など自分の要望を伝え、自由だけのオリジナル商品を製作してもらうことができる。

三越銀座店も大規模改装

近接する三越銀座店も負けてはいない。10月14日に全館のリモデルグランドオープンを予定。スーツなどオフィシャルシーン向け紳士服・雑貨フロア(5階)については一足早く10月7日にオープンする。

今回の改装では、間仕切りを減らしてスペースをオープン化。客がさまざまな商品を比較検討しやすいように展示する。一般的に百貨店の売り場といえば、ブランドごとに区画され、客はその区画の中で商品を選び、お気に入りがなければ別の区画に移るという行動を取っていた。改装後は、一部のブランドでそうした区画は残すものの、三越銀座店が独自に商品構成した売り場スペースを拡充する。

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