三菱「アウトランダーPHEV」は欧州で勝てるか 異例の早期改良で国内販売は盛り返し

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だが、ここに来てが好材料が出てきた。輸入車がプラグインHVの強化に動き出しているからだ。フォルクスワーゲングループジャパン(VWJ)は、旗艦車種のハッチバック車「Golf」にプラグインHVの「Golf GTE」を追加し、9月8日から発売した。 価格は499万円と「戦略的な設定」(正本嘉宏VWJマーケティング本部長)としている。

新たに日本で発売される「ゴルフ」のプラグインハイブリッド車

メルセデス・ベンツ日本は昨年から、最上位モデルのSクラスで「S 550 PLUG-IN HYBRID long」(1590万円)を発売。BMWはSUV「X5 xDrive40e」(927万円)を9月8日に発表したが、どちらも上位モデルからの導入だ。対するVWJは、シリーズ全体の販売台数が毎年2万台を超える「Golf」シリーズでの展開。スヴェン・シュタインVWJ社長は、「特別な車ではない、普通の車で出すことにVWらしさがある」と強調する。

欧州での販売が大きな試金石

2016年には、4代目プリウスのプラグインHV発売も控えており、BMWは今後、ボリュームゾーンの「2シリーズ」や「3シリーズ」にもプラグインHVを日本で展開する予定だ。各メーカーの新車投入でプラグインHVの注目度が高まれば、先頭を走る三菱自動車にとっても追い風になるだろう。

もっとも、三菱自動車の国内販売は11.5万台(2014年度)と、世界販売実績の1割程度に止まる。実は、2014年度のアウトランダーPHEVの世界販売3万5000台のうち、約7割が欧州を占めている。環境対応車に対する補助金制度も充実しており、本命は欧州市場だ。

9月15日から始まるフランクフルトモーターショーでは、新型のアウトランダーPHEVを欧州で初披露し、今月中に販売を開始する。異例の早期モデルチェンジの成果が問われるのはこれからだ。SUVとプラグインHVを戦略軸に据える三菱自動車は、2017年度中に小型SUVを投入し、その後、プラグインHVのモデルも追加する予定。先の新車投入に弾みをつけるためにも、アウトランダーPHEVの欧州での売れ行きが大きな試金石となる。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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