瀬戸際に立つ太陽電池産業、欧州債務危機が飛び火し軒並み大赤字

拡大
縮小

加えて、欧州各国は財政引き締めのため太陽光発電の固定価格買い取り(FIT)の上限価格を軒並み減額、需要の冷や水となっている。最大市場であるドイツの太陽光発電需要は前年比4割減(11年1~9月)と惨憺(さんたん)たるありさまとなった。

にもかかわらず、昭和シェルだけでなく中国の太陽電池メーカー各社も、生産拡張の手を休めなかった。現在の世界の総供給能力は総需要を2・2倍上回っている(11年7~9月)。「1年前までは『11年以降も高成長が続きそうだ』との認識で各社一致していたのに」と、ある中国系メーカーの幹部は声を落とす。

価格は1年弱で半分に

当然、商品在庫は膨れ上がった。米調査会社ソーラーバズによると、11年9月末時点での太陽電池モジュール在庫は約800万キロワット分。これは昨年の世界需要の半分近い水準だ。結果、「夏頃から台湾や中国メーカーが在庫の投げ売りを始めた」(関係者)。

待ち受けていたのは市場価格の急落だ。10年12月からの9カ月で、太陽電池モジュールの市場平均価格は1ワット当たり1・4米ドルから0・7米ドルへと半値になった。今や世界首位の中国サンテックパワーや2位の同JAソーラーも営業赤字に苦しむ。

円高などで価格競争力に劣る日本企業は、海外に活路を求め始めている。太陽光発電協会によれば、国内の太陽電池出荷に占める輸入品割合は11年度上半期で17・5%と過去最高だった。円高を武器にした外資系メーカーの攻勢だけではない。シャープ、京セラなどが国内工場の生産を抑え、割安な海外からの外注品の販売を増やしている。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT