ムーディーズの日本に対する見方(年次報告)《ムーディーズの業界分析》

拡大
縮小


(1)経済力--強い~非常に強い

日本の経済的強さは、経済の多様性と規模の大きさによる。日本の経済は世界第3位の規模で、ドイツと英国を合わせた大きさに匹敵する。生産性は他の先進諸国と同程度で、輸出セクターの生産性はさらに高い。潜在成長率は低い(約1%と米国の半分未満)が、過去2年間の失業率4~5%は米国およびユーロ圏よりはるかに低い。

震災からの復興が進んでいるとはいえ、影響は長引く
震災で破壊された資本ストックコストは16.9兆円(GDPの約3.5%)。

経済により顕著な影響を与えたのが製造業のサプライチェーン寸断で、4~6月期の輸出は5.0%(前年度比の実質ベースでは5.3%)減少。国内・海外のメーカーが、サプライチェーンリスクを削減するために日本以外にシフトすることがネガティブな影響をもたらす可能性がある。これが、現在国内の投資および経済成長をやや阻害する要因となっていると見ているが、円高などの要因からも影響を受ける可能性があるため、長期的には課題が大きくなるかもしれない。

電力供給は、長期的に経済成長への障害となる可能性がある。反原発の動きもある。原子力は日本の電力供給の約30%を占めるため、グリーンエネルギーではベースロードの供給ギャップを埋めることはできず、原発事故は日本の産業競争力にもマイナスの影響を与える。短期的には被災者への賠償金支払いの負担が大きくなる可能性、長期的には原子力から他の電源へのシフトによるコスト増が考えられる。

7~9月期までに、輸出の回復と、底堅い個人消費および投資により、10年10月~11年6月の景気後退から抜け出すことができた。四半期の実質成長率は年率換算で6.0%。回復は12年も緩やかに進み、実質成長率は2.0~3.0%になるとみられる。日銀による13年の成長率見通しは1.5%である。

ユーロ圏の危機が短期見通しに影響を及ぼすリスクは、主に貿易を通じたものとなる。日本の製造業は、先進国への高付加価値品の輸出に依存しているため、08年の金融危機下での世界的な需要の縮小によって特に影響を受けた。

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