「路線バスの旅」が、ほぼ流行らない根本原因 バスは、観光客にはわからない部分が多い

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もちろん、技術の進歩によってかなり改善された部分もある。1990年代当時、路線バス乗り継ぎの計画を立てる場合、バスの時刻を知るには各バス運行会社に電話で問い合わせたり、現地で配布されている時刻表などを送ってもらうしかなかった。それが今は、ほとんどの路線バス事業者がインターネットで時刻表を配信している。だから“居ながらにして”調べることはとりあえず可能となった。

しかしそれで十分かというとそうではない。インターネットの情報は各事業者(市町村の運営するバスは各市町村)がそれぞれで対応している。ところが一般の利用者は、乗りたい区間をどのバス事業者が運行しているのかといった知識は通常持っていない。ということは、ある程度の知識を持っているか、それなりの手間をかけないと必要な情報まで行きつかないのである。

仮に必要な情報に行きついたとしても、使いたい路線の乗りたい区間の時刻を的確に調べきるには、相当な習熟を要するサイトがほとんどといってよい。かくして路線バスは“調べてもなおよくわからない”存在となり、利用をあきらめてしまう人も多いのである。

旅行者はますます利用しづらくなる

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予約制バスの停留所。標識柱に時刻表の記載がない

今後、地方の路線バスはどんな方向に向かうのだろうか。人口減少や少子高齢化が顕著になり、事業としての路線バスを維持していくのはかなり困難になっている。

運転者不足といった現実もあり、バス事業者はバスの特性を発揮できるある程度の基幹ルートに資源を集中、需要規模の小さいローカル区間は、地方自治体がバスという形に限らず、地域に合わせた形で確保し、双方を結節させることによってネットワークを形づくって行くことになるだろう。ローカル区間には、いわゆる「予約制」のデマンド交通が選択されるケースや、運行される曜日が限定される場合も多くなっている。

そういう意味では旅行者が路線バスを使って移動するというのは、ますますハードルが高くなってしまうのかもしれない。

鈴木 文彦 交通ジャーナリスト

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すずき ふみひこ / Fumihiko Suzuki

1956年山梨県生まれ。東北大学卒業後、東京学芸大学大学院で交通地理学を学ぶ。以後フリーの交通ジャーナリストとして月刊『鉄道ジャーナル』にレギュラー執筆するほか、バス・鉄道に関する著書・論文、記事多数。近年は交通事業者や地域のアドバイザーをはじめ、講演活動も行う。

NPO法人日本バス文化保存振興委員会副理事長

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