スマホ強化は8割達成 高付加価値の土管屋になる--KDDI社長 田中孝司

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海外ではコンテンツサービスの拡大に備えたデータセンター拡張と、通信事業者への出資の2本柱。出資に関しては、これまで進出していない地域ではスピード重視でM&Aを行う。旧来型の携帯事業者にはもう成長余地がないため、インターネット系の企業が焦点だ。

09年に初めて投資をしたバングラデシュのインターネット接続事業者「ブラックネット」は、最近黒字化した。今後も東南アジア、アジア周辺を中心に投資を積極的に行っていく。大型投資よりも、小規模でも成長性を重視していく。

国内はM&Aの余地は少ない。ジュピターテレコム(JCOM)を中心としたCATV(ケーブルテレビ)への投資はこれからも続け、CATVのネットワークにスマホをつなげるなど有機的なつながりを作っていく。また、ウェブマネーやウェブ決済の強化も重要だ。

今後は、ネット上のさまざまなベンチャーを発掘し、自分たちの付加価値となるようにしたい。すでに今年の6月からは「KDDI∞Labo(無限ラボ)」という、アプリケーション開発ベンチャーを支援するプログラムも始動している。

──周波数の割り当てでは、総務省が事業者を審査・選定していたこれまでの方式から、オークション制度への移行が検討されましたが、12年春をメドに割り当てる900、700メガヘルツ帯では見送られました。

オークション制度自体は否定しない。だが、最低でも10倍の通信量になるスマホの普及で、トラフィックが逼迫している状況だ。現在、スマホユーザーを中心とした約10%の利用者がデータ量の74%を利用している。オークション制度導入には時間を要するため、制度を整備している間にネットワークがパンクして利用者が不幸になるだけ。今回、オークション制度導入を見送ったのは妥当な判断だ。

たなか・たかし
1957年大阪府生まれ。81年京都大学大学院修了、国際電信電話(現KDDI)入社。2007年、取締役執行役員常務。10年、代表取締役執行役員専務を経て社長就任。

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(聞き手:麻田真衣 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2011年12月24-31日新春合併特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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