激務さんの「最強育児」は、ママ弁護士に学べ 三者三様の両立子育ては、なぜ実現できた?

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司法修習同期の夫と共同事務所を経営する山田浩子弁護士の場合、最初に勤務した事務所は一般民事中心のいわゆる「マチ弁事務所」だった。所長を含めて弁護士は3人。1人にかかる負担が重い事務所だった。

姉弁は1児の母でバリバリ働くタイプ。山田弁護士もさほど疑問にも思わず激務をこなし、充実もしていたが、2度の流産で自分の働き方を見直すべきなのではないかと考えるようになった。

一人事務所を立ち上げるつもりで退職を決めたが、一般民事は離婚や相続、借金の整理など、個人の私生活に踏み込む業務が中心だ。それだけに、クライアントとの関係はウェットで濃密なものになりがち。

法人対象の業務にはない達成感を得られることがある一方、時として紛争の相手方だけでなく、クライアントの恨みを買うリスクもある。昼夜を問わない電話やおびただしい量の誹謗中傷メールで鬱になる弁護士もいる。そんな事態になることを心配した夫が勤務先の法律事務所を退職し、夫婦で事務所を立ち上げることになった。

9ー17時に収めつつ、業務からは離れない

退職直前に妊娠が判明、11月に事務所を立ち上げ、翌年5月に男の子を出産した。安定期に入るまではつわりがひどく、独立早々、事務所の運営は夫の稼ぎに頼らざるを得なくなった。2度流産しているので、大事をとって出産3カ月前から仕事は大幅にセーブした。産むために働き方を変えたわけではなかったが、働き方を変えようとした結果、産むことができた。

ただ、長期間仕事から離れるリスクは避けたいと思い、妊娠中から保育園の確保に動いた。山田弁護士も「職住近接は働きながらの子育ての必須条件」だと言い切る。事務所は自宅からも、預けられる施設からも近い場所に構えた。出産2カ月後に託児施設に預けて仕事に復帰、9カ月後から認証保育所、11カ月後から区立保育園に移った。

5年後に女の子を出産した際も、長男の時と同じ託児移設を短期間利用し、4カ月後に長男の時と同じ認証保育所へ。「1歳児は100人待ちだったが、ゼロ歳児には空きがあった。1年くらいは自分の手で育てたいと考えていたら入れなかった」という。

6カ月後、長男と同じ区立保育園に移ることができた。「認証保育所にすでに通っている、すでに働いている、きょうだいが同じ保育園にいる、ということがポイントになった」という。

山田弁護士はいま、9時から17時で終わる量に仕事をセーブしている。「量は減らしているが、業務からは離れないようにしている。事務所の経営を支えているのはもっぱら夫だし、弁護士のくせに、そんな夫に寄りかかった働き方はおかしい、と言われることもあるが、子どもが手を離れるまではこのペースを守りたい」という。

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