AppleWatch、知られざる「健康機能」の凄み アップル本社の部門責任者に直撃!

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アップルにとって、ヘルスケアの領域をより深く理解する必要があった。ブラニック氏はそう振り返る。

大企業でかつ潤沢な資金を有する優秀な企業であれば、スタートアップでなくても買収することもできたはずだ。しかしアップルはそうはせず、フィットネスラボを設立してより深く、健康とフィットネス分野を研究するところから出発した。26人の看護師や14人の運動生理学の専門家と研究に参加する社員が、室温管理された屋内や屋外でのさまざまな環境でデータの収集を行い、その総時間数は実に3万3000時間にも及ぶ。

これらのデータを背景に、AppleWatchにおける運動や日々の活動の計測の仕組みを組み込み、エクササイズ機能として提供できるようになった。
確かに、企業買収を行う方が、素早くサービスを立ち上げることができたかもしれない。しかしアップルはこの分野にしっかりと投資をし、時間をかけて取り組んできた。

人の健康という永遠のテーマに対して、アップルがきちんと取り組んでいく姿勢の表れであると同時に、この分野が長期的な戦略のひとつとして数えられていることをうかがわせる。

習慣化への挑戦

AppleWatchのエクササイズ計測のシンボルは、3つのリングだ。外側から消費カロリーを表す「ムーブ」、早歩き以上の運動を計測する「エクササイズ」、1時間ごとに1分以上立つことを目標とする「スタンド」を表している。

エクササイズは1日30分、スタンドは12時間とあらかじめゴールが決められているが、ムーブの目標消費カロリーは各自で設定できるようになっている。ちなみにブラニック氏は、ムーブの1日のゴールを900kcalに設定していた。

リングのデザインを採用するまでに、デザインチームの試行錯誤が続いたという。課せられた条件は、アイコニックで、複数の計測項目について目標までの到達度を一目で把握でき、目標達成後も計測を続けられる、直感的なデザインであること。

数値、ラインなどさまざまな検討を行った結果、3重のリングのデザインを選んだという。目標の半分まできた、あと1/4で達成できる、と直感的に理解でき、目標以上に運動をした場合、リングは2週目に入ってカウントを続け、達成感を刺激してくれる。

一般的に、エクササイズやダイエットの大敵は、習慣化されずにやめてしまうことだ。それを防ぐために用意されているのがいちばん内側にある「スタンド」のリングだという。

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