旅客機と渡り鳥「への字」編隊の"共通点" 知れば知るほど面白い「航空力学」

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細長い翼ほど翼端渦の発生が少なくなります。「への字」に並び、見かけ上の翼を長くすることで翼端渦の発生を減らし、空気抵抗を小さくしているのです。そして、編隊のすべての鳥の翼が空気力学的にひとつの翼になるように、すべての鳥の翼端と翼端を同じ距離に保ち、「への字」を描いています。その間隔は、翼の全長の25%という説もあります。

飛行機もまったく同じです。翼を細長くすると翼端に発生する渦を少なくできます。しかし、あまりにも細長い翼にすると強度上問題がありますし、翼内燃料タンクの容量や空港施設上の問題が発生します。

そこで、細長い翼と同等の空力的効果が得られる「ウイングレット」を取り付けています。直角に近い角度で翼端に取り付けられた小さな翼がウイングレットです。

このウイングレットは、空気抵抗を小さくするほんの一例に過ぎません。飛行機の空気抵抗を減らす工夫は、ほかにもたくさんあります。この工夫のための基礎知識が「航空力学」です。 

燃料の消費量は自立航法の実現で激減

渡り鳥をプラネタリウムの中に入れて実験したところ、星の位置を参考にして長距離飛行していることがわかりました。一昔前の飛行機も、夜間フライトでは鳥と同じように星座から自分の位置を推測する「天測航法」と呼ばれる方法で、太平洋横断飛行をしていました。

現在では、星座を参考にしなくても飛行が可能な「自立航法装置」を備えています。この自立航法装置は、星が見えない天候でも安心して飛行できるだけではなく、燃費節減にも有効な装置となっています。

主に巡航に使用する飛行機の通路である「航空路」は、原則として「地上無線標識」を結んだものです。そのため、航空路は無線標識の設置場所によりどうしても多少折れ曲がった通路になってしまいます。

しかし、自立航法装置を装備した現在のハイテク機は、「広域航法(RNAV)」と呼ばれる航法により、無線標識を結んだ航空路以外でも自分の位置を知り、正確かつ自由に飛行できるようになりました。そこで、無線標識を結んだ航空路に加えて「RNAVルート」と呼ばれる航空路が新たに設置され、現在の航空路の主流となっています。

RNAVルートは、直線距離が長い航空路となり、飛行時間を短縮できるようになりました。たとえばRNAVルートを飛行することで3分間の時間短縮ができたとすると、500リットル以上の燃料を節約できます。

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