元資生堂の赤字化粧品ブランドは甦るか 衝動買いを誘う「アインズ&トルペ」の実験

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「アインズ&トルペ」新宿東口店。アインファーマは調剤薬局からドラッグストアへと食指を伸ばした

計画達成のため、アインファーマがとった戦略は、「100%女性客」の店作り。出店は働く女性が会社帰りに寄れる都心部だ。洗剤などの日用品は一切排除し、粗利率の高い化粧品を充実させる。時間をかけて回遊できる広い店舗で、”衝動買い”を誘う狙いである。まず新宿東口店では、化粧品を試せるカウンターを充実させた。

武器となるのがPB化粧品だ。2006年から、プレミアム価格帯でPBの化粧品ブランドを展開、現在は売上高の10%近くまで成長させたマツモトキヨシによれば、化粧品でPBを作る強みは、「参入障壁の低さと景気に左右されにくい点」(同社商品戦略室)という。

アユーラにはすでに世界観がある

アインファーマが手に入れたアユーラには、創業以来21年間で構築された世界観が既にあり、イチからブランド力構築に励む必要はない。今後も同様のM&Aは続けて行く方針。あわせて、自社企画のPBブランドも投入することで、PBの売上構成比率30%超を目指す。

8月に発表された、アインファーマの7月のドラッグ事業の業績は、売上高で前年同月比18%増、客単価で同12%増という堅調さだった。既存店売上高が改装で大きく伸びたことが寄与した。8月以降は新宿東口店の売上高も加わる。戦略は足元で確実に実を結んでいる。9月12日には本拠地である札幌で、450坪の大型店をオープンさせる予定だ。現在は、銀座周辺で500坪規模の出店をしようと、物件探しの最中である。

アインファーマの大谷喜一社長はドラッグ事業の出身。35年間、なかなか立ちゆかないドラッグ事業で、辛酸をなめ続けた。「アインズ&トルペ」が飛躍できるかどうか、元資生堂ブランドの浮沈が大きく左右しそうだ。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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