文化と外交 パブリック・ディプロマシーの時代 渡辺靖著 ~国際社会でどのように生きたいかが問われる

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本書はカナダが「PKO活動、対人地雷の廃絶、政府開発援助など、国際益ないし国際公共性に関わること」によって「自国の道義性や存在力を示している」ことの意味などを語っているが、たしかにそのような活動は必要なのだ。国際社会での相互理解は“秘するが花”というわけにはいかない。

もちろん中国が6000億円を超える「対外宣伝」をしているからといって、お金を使えばよいということではない。存在しない「道義性」を伝えることなどできないからだ。「プロパガンダでないことが最良のプロパガンダ」であると著者は指摘するが、まったくそのとおりである。問われているのは、私たちは国際社会でどのように生きたいのか、という視野であろう。

わたなべ・やすし
慶応義塾大学環境情報学部教授。1967年生まれ。米ハーバード大学大学院博士課程修了。Ph.D.(社会人類学)を取得。英オックスフォード大学シニア・アソシエート、英ケンブリッジ大学フェローなどを経る。専門はアメリカ研究、文化政策論。

中公新書 819円 204ページ

  

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