英語特集

ビジネス英語の最前線
「日本人の英語学習には緊張感が足りない」
脳科学者・茂木健一郎が語る効率的学習法とは

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英語は、言うまでもなく、グローバルにビジネスをするための必須言語となっている。ただ、日々の仕事に忙殺されているビジネスパーソンにとって、学習の時間を捻出するのは難しい。では、どのようにすれば英語を効率的に学ぶことができるのだろうか。脳科学者で英語に精通する茂木健一郎氏が語る学習方法とは―。

世界のニュースにはタイムラグがある

――ビジネスパーソンにとって、英語を身に付けていないのは不利なのでしょうか。

茂木●英語の情報やニュースは、日本語に翻訳されると思われている方が多いようですが、皆さんが見落としがちなのは、そのタイムラグです。たとえば、グーグルが開発した自動運転車がアメリカでニュースになったのはもう何年も前です。英語圏のメディアや動画サイトでは、何年もその議論で持ちきりになりましたが、日本で本格的に議論になったのは去年から今年にかけてじゃないでしょうか。最近話題の人工知能についても1年くらいの差がある。目新しい第一報は日本で翻訳されるかもしれませんが、その後のニュースはなかなか日本語で入ってきません。

ビジネスでは、1~2年のライムラグが致命的であるのは当然ですが、それが1日であっても、致命的な差になりかねません。英語ができなければ、それだけビジネスの最前線から出遅れてしまいます。

――英語を使ってビジネスをするのが当たり前の時代ということですね。

茂木●才能も野心もある人は英語の経済圏に入ってくる時代です。中国、韓国はとくに顕著ですよね。英語で情報を集めてビジネスに生かす人たちの厚みは、以前と比べものにならないほど増しています。

英語はサイエンスやテクノロジーの世界では唯一と言っていい言語です。アメリカ発のインターネット文明が世界を席巻している今、英語ができないと最先端の場所には行けません。つまり、英語をやるべきだということには、議論の余地がないんです。

――英語ができないと、二歩も三歩も遅れてしまうわけですね。

茂木●僕は幸運にも、大学時代に日米学生会議というものに参加しました。そこで、アイビーリーグの学生と話をしたときに、自分にはクリティカルシンキング(物事を分析して自分の言葉で発言する能力)が身に付いていないことを痛感しました。たとえば、ハーバード大学の「ジャスティス」という講義では、隠れたルールが存在します。それは議論で意見を言う際に、前の発言者と異なる意見を述べなければいけないということです。日本では議論をすると「私も同じ意見です」とよく言いますが、ハーバードではあり得ません。異なる意見を出し合うことがクリティカルシンキングにつながるんです。英語を学んでなければ、僕がこのことに気がつくのはもっと遅かったかもしれません。

緊張を乗り越えると脳内回路が強化される

――脳科学的に英語力の効率的な高め方はあるのでしょうか。

近著『教養の体幹を鍛える英語トレーニング』(夜間飛行)

茂木●日本人の英語学習のパターンを見ていると、緊張感が足りていません。それは学生にもビジネスパーソンにも言えることです。たとえば、僕は大学の講義で学生に英語の1分間スピーチを求めているんですが、その理由は、緊張を乗り越えて何らかの達成感が得られると、ドーパミンが出て英語の脳内回路が強化されるからです。そのためにも、ターゲットはなるべく厳しいほうがいい。たとえば、五輪の陸上100㍍決勝のスタート直前のアスリートくらいの緊張感をもって英語を学ぶことが脳科学的には望ましいんです。

――ウサイン・ボルトと争うような気持ちで英語を学ぶということですね。

茂木●脳にとっては、そうですね。あと、実践的に言えば、ジョークが大事です。意外にもジョークは自分の英語が通じるかどうかの試金石になります。簡単なジョークでもわかったふりができないからです。僕は英語の教材として、いつもコメディーのドラマや映画を薦めていますが、それは英語圏のジョークも肌で感じられるからです。ビジネスの現場で、ちょっとしたジョークが言えれば、それだけ高い評価を得ることができます。

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