公助、共助ではなく自衛を余儀なくされる--『国民皆保険はまだ救える』を書いた川渕孝一氏(東京医科歯科大学大学院教授)に聞く

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──適正化では、メタボ検診と病院の再編が目玉でした。

疾病予防に力を入れ、メタボ保健指導で医療費を浮かせようとした。予防にも医療費控除のような経済インセンティブが必要だ。そうでないと、メタボ検診率も高まらない。もう一つの病院の再編は、社会的入院を是正して医療費を浮かすものだが、受け皿の整備が弱すぎる。

──津波被災地の医療問題にもかなりのページが割かれています。

福島は基礎データに乏しい。岩手、宮城もデータは3・11止まりで、それ以降の有効なデータはほとんどないのが難だ。特に高齢化や人口動向が読めない。岩手に21も県立病院がいるのか。釜石は75歳以上の人口さえ減り始め、石巻も今の日赤病院を頑強な災害拠点病院にし、それこそ市民病院と合併すべきだが、再生資金や補助金が出ることから市長は乗り気ではない。医師も系列の医局が違うという。「部分最適」と「全体最適」との壁を再認識させられている。

かわぶち・こういち
1959年富山県生まれ。一橋大学商学部卒業。シカゴ大学経営大学院修了。民間企業を経て、厚生省国立医療・病院管理研究所入所。一時、国立社会保障・人口問題研究所主任研究官を併任。その後、日医総研主席研究員、日本福祉大学経済学部教授、経済産業研究所ファカルティーフェローを経る。

(聞き手:塚田紀史 撮影:谷川真紀子 =週刊東洋経済2011年12月17日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


『国民皆保険はまだ救える』 自由工房 1890円 276ページ


  
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