【産業天気図・パルプ/紙】原燃料高と供給過剰の2重苦再来か

今年最大の業界ニュースは、王子製紙<3861.東証>による北越製紙<3865.東証>への敵対買収騒ぎだろう。敵対買収を業界首位が行ったという意味では、国内産業史的にも画期的な出来事だった。
 ただ、王子の脇の甘い姿勢は北越など反対勢力に付け入る隙を与え、画期的買収はあえなく失敗。敵対買収に踏み切った王子の“勇気”を称え、鷹揚に理解を示す向きもあるが、経営的には失態を演じたと言うほかなかろう。現に王子は今回の騒動を通して何ら得るところがなかったばかりか、「反王子勢力」の結集まで招いてしまった。王子の描いた買収ストーリーは当時の説明資料を今読み返しても“美しい”が、結局は美しいまでの「ヤブヘビ」となった。
 その後、12月にかけて「反王子」ないし「非王子」の動きが活発化した。王子の鈴木正一郎会長に「業界に亀裂を生じさせた」などと日本製紙連合会の会長辞任を求める北越や大王製紙<3880.東証>の動きは、論じる価値さえ見いだせない。注目すべきは一気に広がった資本・業務提携で、北越は買収阻止の過程で北越株を9%弱購入し2位株主となった日本製紙グループ本社<3893.東証>と戦略提携。真偽のほどは不明だが、5年間で両社計300億円の効果を出す、と宣言した。北越はまた、日本製紙と同様に買収阻止を通じて8位株主となった大王とも技術提携。日本製紙は住友商事<8053.東証>を介して、段ボール最大手のレンゴー<3941.東証>とも手を結んだ。王子と取引のあるレンゴーは必ずしも「反王子」を強調しないが、王子と比べて劣勢が否めない日本製紙の板紙・段ボール事業がどう強化されるかは今後の焦点の一つ。このほか東海パルプ<3706.東証>と特種製紙<3881.東証>という中堅2社の経営統合も公表された。
 だが、これらの効果が出始めるのは08年3月期以降のため、評価するのは時期尚早だろう。足元を見れば、むしろ懸念材料ばかりが目に付く。今下期は原油高が一服の半面、原料古紙やチップ、薬品などの価格が上昇傾向。ここ最近の円高は原燃料輸入には有利だが、輸入紙流入を招く副作用もある。何より、洋紙の値上げが非常に遅れているのが厳しい。多くのメーカーは今期の収益計画を全般に期初計画から引き下げたが、そのシナリオ通りに着地できるかどうかも微妙、と言わざるを得ない。
 続く08年3月期は後半にかけて大王、日本製紙の最新コート紙大型設備が稼働する。09年3月期中には、北越と王子の大型設備も完成。4社それぞれ老朽機のスクラップや一部の海外輸出を口にするが、単純合計約135万トンの増産で供給過剰から市況軟化に陥る、との危ぐは業界内で深まるばかり。その一方で原燃料を中国が飲み込み続けるとすれば、06年3月期に各社を大減益に陥れた市況軟化と原燃料高という“2重苦”が再現ないし一段と強まる恐れは否定できない。その時こそ、相次いだ提携・統合の真価が問われる。
【内田史信記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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