錯覚から探る「見る」ことの危うさ


第6回・最終回 錯覚とタイリングアート

    タイルを敷き詰めるパターンは、人類が家を作り始めた直後から壁や床を飾るアートとして使われてきた。しかし、長い間、三角形や四角形などの単純な形を組み合わせた幾何学模様が主流であった。これを劇的に変えたのが、オランダの版画家エッシャーである。
 図と地の反転と呼ばれる錯覚がある。図1がその例である。この図は、中央に壷のシルエットが見えたり、向き合った2人の顔が見えたりする。どちらが図形でどちらが背景かがときどき入れ替わるという多義性を持つため、これも錯覚の一種と考えられている...

第5回 写真で嘘をつく方法、マンション広告写真がステキな理由

   「写真」という名前の由来は、「真を写す」である。しかし、写真を見れば本当に真実をそのまま知ることができるであろうか。必ずしもそうではない。たとえば、マラソンの実況中継をテレビで見るとき、ランナーを正面からとらえた画面では、実際にはかなり離れているランナーの間隔がぶつかりそうに詰まっていると感じることがある。 
 逆に、新築マンションの広告写真では、ロビーや部屋が実際より広く感じられることが少なくない。これらは、特に写真を加工したわけではないのに、真実とは異なる印象を誘発する。本稿ではその原因を考えてみよう...

第4回 不可能モーションの設計

  前回は、不可能立体の絵と呼ばれるだまし絵の中に、その名に反して立体として作れるものがあることを紹介した。それと同じトリックを別の形で用いると、立体自体はありきたりのものに見えるのに、そこに動きを加えるとありえない動きが生じているという知覚を作り出すことができる。これも新しい立体錯視で、不可能立体に対応して不可能モーションと呼ぶことができよう...

第3回 不可能ではない「不可能立体」

  不可能立体の絵と呼ばれるだまし絵がある。図1、図2、図3がその代表的な例である。 
 図1は、中庭のある建物の屋上に作られた階段で、登り続けると出発点に戻るというありえないことが起こってしまう。「無限階段」と呼ばれている。このだまし絵はオランダの版画家エッシャーが作品「上昇と下降」(1960)の中で使ったことでも有名である。
 図2は、ペンローズの四角形と呼ばれており、ひねりが加わった形で角材が輪につながっている。だからまっすぐな角材をつないだのでは作れそうにない...

第2回 静止画なのに動いて見える

  1枚の絵に描かれている図形は止まっているはずである。それなのに、見る人には動いているように感じられる絵がある。これは動く錯視と呼ばれる。
 古典的な代表例は、オオウチ錯視と呼ばれる図形である。見つめていると、中央の図の部分と周りの背景の部分が、ゆらゆらと別々に動くのが感じられるであろう。動かなかったら、顔のほうを少し動かしてみるといい。静止図形なのに動いて見えるのだから、これは錯覚である。...

第1回 錯視図形~古くて新しい不思議

  目の錯覚とは、図形などが実際とは違うように見えてしまう現象である。錯視とも言われる。平行な線が平行ではなく見えてしまうツェルナーの錯視、同じ長さの線分が違った長さに見えてしまうミュラー・リヤーの錯視などは、誰でも知っているもので、子供のころこれを見てとても不思議だと感じた人は多いであろう。
  錯視の例をさらに観察してみよう。同じ大きさと形の二つの図形なのに大きさが違って見えてしまうもので、ジャストローの錯視と呼ばれている...

杉原 厚吉 すぎはら・こうきち
明治大学特任教授、工学博士。岐阜県生まれ。電子技術総合研究所、名古屋大学、東京大学などを経て現職。2010年ベスト錯覚コンテストで優勝。趣味はそば打ち。

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