シリコンバレー企業の資金調達、退潮の兆し 「ユニコーン企業」UberやAirbnbに打撃も?

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ベンチャー・キャピタリストたちは数カ月前から、ユニコーン企業に後発で出資しようとする投資家が、最も有望な新事業でもない限り数億ドル単位の小切手にサインする気をなくしつつあると感じてきた。バッテリー・ベンチャーズの投資パートナー、ロジャー・リー氏は「投資家たちは株式市場で成功する企業を、厳しく見定めるようになった」と語る。

投資家は、これまで6年続いてきた株の強気相場が弱まるのは避けられないと見て、こうしたベンチャー企業の全株が公開された場合、期待どおりの企業価値を維持してくれて金もうけができるか自信を持てないでいる。

新規株式公開(IPO)後の値動きが公募価格を下回る例が相次ぎ、投資家のこうした懸念は強まっている。市場調査会社アイプリオ(Ipreo)の提供データをロイターが分析したところでは、先週後半の時点で、38のテクノロジー会社やバイオテクノロジー企業が今年に入って実施したIPOのうち58%が、公募価格を割り込んでいる。

「返金保証」が4割に上昇

後発出資案件への投資家の信頼を示す指標として、ベンチャーキャピタル専業のフェンウィック&ウエストの弁護士、バリー・クレイマー氏は、残余財産分配に対する優先権の付与動向などに注目している。これは企業が投資家が支払ったよりも低い価格で買収された場合、他の投資家よりも先に返金を保証する権利だ。

クレイマー氏によると、シリコンバレーの企業への後発出資案件のうち、こうした保護が付けられる比率は昨年末時点で約26%だったが、現在では約40%に上昇した。同氏はこの点について、たった約半年で結論を出すのは時期尚早としながらも、「重要なシグナルだ」と述べている。

それでもまだ、成長著しい大手企業は、市場の不安とは無縁でいられそうだ。Uberはつい最近、予定よりも早く中国で10億ドルの資金調達を終えたところだが、応じきれないほどの投資家が殺到した。

最近の株価暴落が最大手のベンチャーキャピタルにどの程度響いたのかを知るのは難しい。スタートアップ企業が株価評価を受けるのは資金調達をする時だけであり、そうした機会は年に一回程度だからだ。

参考になる例としてはGSVキャピタルを挙げられるかもしれない。初期の従業員などから株式非公開企業の株を購入するファンドで、ナスダック市場に上場している。同社は6月30日時点で、資産の12.5%をデータ分析企業Plantirに投資し、7.7%をストレージ会社ドロップボックスに投資している。GSVキャピタル株価は8月20以降で、6%下落した。

(サラ・マクブライド、ヘザー・ソマービル 
編集 スティーブン・R・トラスデール、ジョン・ピッカリング)

 

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