“焼き牛丼”で国民食に参入 三光マーケティングフーズの新たな挑戦

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そして東日本大震災がその動きを加速させる。震災以降、自社店舗も含めて、宴会や歓送迎会の予約が相次いでキャンセルになるなど、客足は遠のいた。一方、周囲の牛丼チェーンやハンバーガー店など“日常食”業態の客足はむしろ増えていた。

「需要が安定した日常食業態を開発しなければ生き残っていけない」(平林専務)と、三光フーズが目をつけたのが牛丼だ。牛丼は、すき家、吉野家、松屋が低価格競争でしのぎを削る典型的な過当競争市場。経営戦略を専門とする信州大学の牧田幸裕・准教授は「牛丼は業界首位のすき家が率先して値下げ競争を仕掛ける、手詰まり市場。もはや首位しか生き残れない」と分析する。

だが、「競争はあって当たり前。おいしい牛丼を作れば、まだまだニーズはある」(平林専務)と果敢に参入を決定した。

まず、この激戦市場で戦うために従来の牛丼と差別化した商品開発に取り組んだ。「牛肉を焼く、煮る、蒸すといろいろ試した中で、焼くのが一番という結論にたどり着いた」と東京チカラめしを担当する中里友彦・第5営業部部長は振り返る。「従来の牛丼は肉を“煮る”が、肉文化が発達している欧米では肉は“焼く”もの。焼いたほうが肉の食感や香ばしさを生かせる」(同)。

ただし、“焼く”と決めた後もいくつもの難題にぶつかった。焼いた肉を単純にどんぶり飯の上に乗せただけでは、味が濃く飽きやすくなってしまう。火の通し方など焼き加減を標準化する店舗オペレーションが難しい。また“煮る”牛丼のように作り置きができず、顧客を待たせてしまう──。

 

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