「野田聖子出馬」は、"安倍一極構造"を壊すか 安倍首相への逆風が意外な作用をするかも

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実はこの日の野田氏のパーティーに参加した自民党議員は、衛藤征士郎元衆院副議長、石破茂地方創生担当相、鳩山邦夫元総務相、尾辻秀久元厚労相などおよそ20名。総裁選出馬に必要な推薦人の数とほぼ同じだ。「私は野田さんの一の子分」と言ってはばからない石井みどり参院議員は、「日本で最初の女性の総理大臣が出るのなら、野田さん以外はいない」と野田氏に対する熱烈な支持を強調した。

また同期で野田氏と仲のいい浜田靖一元防衛相は「政治家の集大成ということでは、彼女の主張もわかる」と理解を示し、野田氏よりも若く1度落選したため“弟分”を自任する小此木氏は「さらなる困難に手を携えて頑張っていきたい」と運命を共にすることを宣言している。

古賀誠・岸田派名誉会長がカギ握る

ただし参加者の中には、2003年の衆院選で初出馬した時から“安倍首相の子飼い”と言われている城内実外務副大臣などが含まれており、“オール与党”というわけにはいかない。しかも野田氏が政界に引き上げた有村治子内閣府特命担当相や三原じゅん子参院議員、そして“野田氏の妹分”と衆目が認めていた小渕優子元経産相も、顔を見せなかった。

さらにいえば野田氏の強力な“後見人”でもあり、「文藝春秋」9月号で総裁選を行うことを主張した古賀誠・岸田派名誉会長も、その姿を見せていない。

「古賀さんは水面下で切り崩しをやっているんじゃないか。対象は派閥に入っていない議員たち。結構数が多いんだ」

ある自民党議員はそう語った。安倍首相が圧倒的に強いといえども、盤石だとは言い難い。「週刊文春」が8月27日号で「財界人との会食中に吐血した」と報じるなど、安倍首相には健康不安説も囁かれている。また安保関連法案で内閣支持率が下落傾向を見せるなど、党内での統率力に限界も見え始めている。

さて野田氏が事実上の出馬宣言をしたのと同じ日、安倍首相も総裁選へ出馬宣言した。ともに1993年の衆院選で初当選を果たし、「第一次安倍政権発足までは、“しんちゃん”“せいこちゃん”と呼びあう仲だった」(野田氏)という2人は、どのような戦いを見せてくれるのだろうか。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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