いま日本に「スマホで授業」が絶対必要なワケ 「ミスターリクルート」が狙う学校教育改革

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大学入試改革によって2020年以降に出題されるものも、こうした「合科」問題が多くなると言われています。知識として丸暗記で覚えていたものや、パターン認識化された内容を封じると、人間の頭は情報処理脳から情報編集脳に切り替わります。それこそがこれから必要な力なのです。

大学入試はすでに変わって来ていて、たとえば、ある国立大学では、こんな面白い入試を課すようです。あるテーマについてレポートを書かせるんですが、3回は答案を突き返されるんです。3回突き返されて、どこまで書き直してこれるか。これは完全に情報編集力ですね。

翌日はそのテーマに基づいたグループディスカッションを行う。一度そのテーマについて書いているので、グループディスカッションでは、他の人の意見を聞いて自分の意見を変化させるのか、どのくらいリーダーシップがあるのかを見られます。大学入試改革は2020年から10年かけて、民間企業が今行っている入社試験のようなものになると思います。

履歴が残ることで科学的な進路指導が可能に

――それ以外に、この奈良市での取り組みで実現することはありますか。

藤原和博(ふじわら・かずひろ)
1955年東京生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事ならびに府教委の教育政策特別顧問。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)『リクルートという奇跡』(文春文庫)『校長先生になろう!』(日経BP)などがある。

たとえば、高校生だけど中学の内容でつまずいている子がいたとしたら、「受験サプリ」の動画授業でその学年にさかのぼってキャッチアップできます。

また、先生から見れば、生徒が学習した履歴が残りますので、これまでの偏差値一辺倒ではない科学的な進路指導が初めてできる可能性だってあります。いずれ専門家を交えてビッグデータの解析も行われるでしょう。

――ビッグデータ解析は勉強の支援にもなりえますか。

もし、高校数学のあるところでつまずいてしまった時、教科書のちょっと手前に戻ってもわからないんですね。なぜかというと、数学は多層のネットワーク型の単元でできているからなんです。

そのため、小中学校のどこかの単元に戻る必要が出てきます。どこに戻ればいいかを教えられるのは、おそらくビッグデータ解析にしかできません。それができたら、学術的にはとても大きなことだと思います。受験サプリが取り組んでいるチャレンジが教育の世界を根底から変えるとしたら、そういうことです。しかも、アダプティブラーニングで、ひとりひとりの理解度や習熟度に合わせてアドバイスができたらすごいでしょ。

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