ラーメン店の新潮流は注文後に「麺から作る」 ファストフードならぬスローフードが流行?

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オーダー後に伸ばし始める、名古屋のうどん店『太門』。目の前で調理工程を見ながら食事ができるのも楽しい

たとえば愛知県名古屋市の『うどん太門』。店主の衣笠太門氏は、某大手のうどんチェーン店で指導係を務めた後に、独立した。うどん太門もオーダーを受けてからうどんを伸ばし始め、目の前の機械で切り、ゆでて提供する。うどんゆえにゆで時間も長いため、完成までには20~30分を要す。

衣笠氏が追求しているのは「うどん店における野菜の摂取量の向上」。実は讃岐うどんで有名な香川県は、人口10万人当たりの糖尿病受療率(患者数)が2011年に全国ワースト2位、2008年はワースト1位だった。その原因のひとつがうどん過多による炭水化物の偏向性ともいわれ、県を挙げて「さぬき野菜うどん」を考案して、推進している。

『太門』では待ち時間を長くして、自ら「うどん店ではなく、酒場」と笑うほど、日本酒などのアルコール類を種類豊富にそろえて、野菜を使った4種類セットの“お通し”を提供するという試みを行っている。

ご当地うどん「もろやま華うどん」は講習会も人気

「地域おこし」的な側面を持つ地域も存在する。埼玉県毛呂山町では2004年に「もろやま華うどん」というご当地うどんが誕生した。江戸流蕎麦打ちの技術をうどんに取り入れ、まさに水回しからこね、伸ばしを目の前で行い、完成させるというもの。講習会も随時開催され、思いのほか簡単にうどんが作れるとあって大好評。地域の活性化にも一役買っている。

このように「スローフード」は現代の人々の食生活を根本から見直す意味合いを持つものだ。ひとりあたりへの提供時間が長くても、一度に作成する量を工夫するなどによって、話題性という集客ツールとなって、高い売り上げは実現可能だ。ファストフードが下火を迎えている今、飲食業界の新たなブームを牽引するかもしれない。

はんつ遠藤 フードジャーナリスト

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はんつえんどう / Hantsu Endo

1966年東京都葛飾区生まれ。東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方を1人でこなし、取材軒数は8000軒を超える。『週刊大衆』「JAL(Web)」などに連載中。また近年は料理研究家としてTVラジオ雑 誌などで創作レシピを紹介している。著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』『おうちラーメン かんたんレシピ30』『おうち丼ぶり かんたんレシピ30』『全国ご当地やきとり紀行』(以上、幹書房)など。

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