【産業天気図・造船】3年以上の豊富な受注残抱えフル操業続く。業績も徐々に薄日差す

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世界的な新造船ブームで造船業界は目下フル操業が続いている。増産対応に追われている各社は生産性向上投資を活発化。南日本造船<非上場>のように大分県内に造船所を新設する企業も出てきた。06年9月末の受注残は5789万総トンに達し、09年一杯までドックは埋まっている。豊富な受注残があることから、各社とも新規受注の営業を抑えて1~9月までの受注量は1682万総トンとなり、すでに昨年1年間の1650万総トンを上回った。船舶規制強化前の駆け込みという特殊事情も重なったが、直近のピークだった04年の2886万総トンから大きく落ち込んできた受注は底を打った形だ。
 ただ1~9月の韓国の受注量は2888万総トンと圧倒的に多いうえ、中国も1665万総トン(05年1年間は1062万総トン)と、ほぼ並ばれた。日本が受注を抑制した事情もあるが、中国の台頭を象徴する出来事となった。ちなみに9月末の韓国の受注残は7435万総トン、中国は3967万総トン。
 フル操業を続ける造船各社の業績にも徐々に薄日が差し始めてきた。今07年3月期の造船部門の収益見通しは三菱重工業<7011.東証>がまだ大幅赤字を計上するうえ、川崎重工業<7012.東証>も赤字を予想。が、石川島播磨重工業<7013.東証>は当初の赤字予想から大幅黒字が見込めそうだ。三井造船<7003.東証>は黒字浮上の見込み、今期黒字浮上予想の住友重機械工業<6302.東証>も黒字幅が拡大しよう。また、規模の同じ船舶を連続建造することで生産性を高めてきた専業中堅の佐世保重工業<7007.東証>は赤字のドル建て船が一部残ったことや船種が増えて生産性が落ちたことから減益となるものの、利益は確保する見通しだ。
 来08年3月期になると、円安時代に受注した低船価の船舶がほぼ一巡し、造船各社の業績回復は一段と鮮明になる。三菱重工や川崎重工は黒字転換し、他社の利益はさらに向上する。09年3月期には利益は一段と拡大する方向だ。
【田中房弘記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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