ある一定量を定期的に食べることが大事だ--『腸!いい話』を書いた伊藤 裕氏(慶応義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授)に聞く

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──腸内に住む細菌の働きも重要とも。

実に100兆個にも及ぶ細菌が住み着いている。人体は60兆個の細胞で成り立っているから、実にそれより多い。腸内細菌については、一般の人は乳酸菌飲料の効能で気にしたり、抗生物質を飲んで下痢したりして意識するぐらいで、知識としてはブラックボックスではないか。ところが、100種以上、重さにして1キロ以上の細菌が、人の体に大いにかかわって生きている。

腸内細菌の研究が進み始めたのは1990年代初めだから、まだ20年ぐらいしか経っていない。今や研究テーマの宝庫とみられている。人間は生きていくために何かと共生していく。端的な例が細胞内のミトコンドリアだが、この腸内細菌も同様で、大きな役割を果たしている。アレルギー性の病気もほとんどが関係しているのではと考えられている。

──その「機嫌」次第で病気が発症する?

腸に圧倒的に多い特殊な免疫グロブリンが発症に介在する。それも腸内細菌が機嫌を悪くして、つまり普通と違う状態になって問題が起こることがだんだんわかってきた。病気にならない免疫力を決めるのに腸が大きな役割を担っていて、免疫グロブリンも半分以上が腸内でできている。また体の神経の半分以上も腸にあり、体のほかの部分の病気にも関係が大いにありそうなのだ。

胃がんの原因の一つピロリ菌の例がわかりやすい。抗生物質でピロリ菌を殺したら確かに胃がんにはならない。そういうタイプの治療法はこれからも増えるだろう。ただ、ピロリ菌が体内にいるのは人にとって何かいいことがあるからかもしれない。ピロリ菌を除菌した後に食道がんが増えているという研究結果もある。

──太らない体質に関係しているとも。

いくら食べても太らない人がいる。いわゆるやせの大食い。よくいわれる理由は吸収が悪いから。その人の持っている腸内細菌が通常よりエネルギーを吸収できなくさせているのではという見方もある。

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