なぜ地方では新しい事業がつぶされるのか ビジネスの芽を摘む「地域魔女狩り」の仕組み

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地域の新事業とは、巨額を要する工場を建設するわけでもなく、まずは数十万円程度で試しにやってみることができる類のものが多いのです。こうした小規模事業を始める前に、皆で議論するのに数百万円もの予算をかけ、皆の労力を割くこと自体が滑稽です。

役に立たない「コンペ」はやめたほうがよい

そんな予算と労力があるなら、審査委員たちがまず事業をやって見せたほうがよいでしょう。事業で重要なのは、計画を机上で戦わせることではなく、結果を戦わせることです。審査することではなく、自ら前を走ることです。

本気で事業に挑戦する人は、そもそも前出のようなビジネスプランコンペなどには参加せず、すぐにやり始めます。これから事業を始める人は下手な審査など受けずに、まずはさっさと自分でやるようにしましょう。そして、先を走って地域で実績をあげている事業家と話をするほうがよほど有益です。

実は、最近では、応募者不足に悩むビジネスプランコンペでは、学生や若者などを勝手に指名しては計画を立てさせ、実践する前から審査してつぶしてしまったり、はたまた補助金漬けにしてしまう、「魔女狩り」に近いものになっているものも散見されます。実践しない大人たちが集まり、若者たちに新規事業を無理やりやらせようとして、つぶすこと自体が意味不明です。

このようなことを繰り返していると、新規事業を正常に立ち上げていく力が地域から失われていきます。その地域には、新しい事業を試す前からつぶしてしまう壁がどんどん出現していきます。

地域において新たな事業で実績をあげている人たちは、初期の非難などもたくみにかわしつつ、くだらないビジネスプランコンペなどにも出場せずに独立独歩、自ら挑戦し、試行錯誤しながら成果をあげています。

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