JR九州上場と新国立競技場問題を考える 国民の税金を勝手に使わせてはならない

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確かに、このまま鉄道事業に頼っていては、稼いでいくことは難しいでしょう。売上高営業利益率(営業利益÷営業収益)を計算しますと、3.6%しかありません。ちなみに、同じJRグループの中で上場している本州3社の数字は、JR東海が30.3%、JR東日本は15.5%、JR西日本は10.4%。JR九州は、収益力が高いとは言えないのです。

経営安定化基金の運用益で利益をカサ上げ

ところが、経常利益を見ると、255億円に改善しています。この理由は、冒頭でも触れた「経営安定基金運用収益」が125億円上乗せされているからです。

経営安定基金とは、国鉄が分割・民営化される際に、鉄道事業が赤字だったJR北海道、四国、九州のいわゆる「JR三島会社」に対して交付された資金です。JR三島会社は、鉄道事業だけではやっていけませんから、「経営安定基金を運用して、その運用益で鉄道事業の赤字を埋める」ということになったのです。

JR九州の場合は、貸借対照表(9ページ参照)の「純資産の部」に「経営安定基金」として3877億円計上されています。これが通年で125億円の運用益を生んでいますから、年率3.2%で運用されていることがわかります。

貸借対照表に詳しくない人のために簡単に説明しておきますと、会社は「負債」と「純資産」という形で資金を調達し、その資金で「資産」を購入し、事業を行っています。「負債」は返済義務のある資金の調達源です。一方、「純資産」は株主のものですが、会社を解散でもしない限り返済義務のない資金の調達源です。会社にとっては安全な調達源と言えます。「純資産」というのは株主が入れてくれた資本金や利益の蓄積である利益剰余金などで、主に株主の所有分を表すものです。ただし、会社がもらったものではなく、あくまでも株主から「預かって」いるもので、会社のものではありません。

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