ゆうちょ銀、限度額引き上げめぐる激しい攻防 頑なだった民間ライバルも徐々に軟化?

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こうした両極端の議論を、どうまとめるのか。8月27日の委員会後の会見で、限度額引き上げの必要性を問われた増田寛也委員長は、「それは申し上げられない。ノーコメント」としながらも、2007年の郵政民営化以前から委員を務めていた経験と照らして「昔に比べると(民間金融機関団体の)ニュアンスは変わってきていると思う」と感想を述べた。

全銀協や地銀協には当時、「(ゆうちょに対しては)暗黙の政府保証がずっと続いているし、業務の規制を緩和しようということに、非常に警戒感があった。(だが)そこは少しニュアンスが変わってきている」と、増田委員長はみる。今回、全銀協や地銀協は、限度額引き上げには反対しながらも、ゆうちょ銀行との協調・連携について触れるなど、少しずつ歩み寄りの姿勢もみられるからだ。

増田委員長のこうした受け止めが、限度額引き上げの容認につながるとはかぎらず、委員会での議論がどうなるかもわからない。だが、かつてほど民業を圧迫しないだろうと判断すれば、預入限度額が引き上げられる可能性はある。

自民党が目指した9月引き上げは難しい

スケジュールについては「政府から要請されている審議の内容は、非常に広い内容になっている。また、多くの意見を寄せられたので、それをよく分析して、意見をまとめていくことになる。いつまでにというスケジュールは申し上げられないが、時間をかけないと、と思っている。上場の前になるか後になるかは、申し上げられないが、それなりに時間がかかるということだけは申し上げておく」と増田委員長は語った。

限度額を引き上げるとすれば、「政府が政令を決めて、正式に民営化委員会の意見を聞くという手続きが必要だが、いま政府はそういう手続きに入るという様子はない」(増田委員長)。

こうした状況では、9月末までに預入限度額を2000万円まで引き上げるとした自民党の提言を実現することは難しそうだ。ただ、時間をかけて議論する中で、自民党案よりも遅いスケジュールで、引き上げが認められる可能性はある。2016年夏には参議院議員選挙が予定されており、その前に引き上げが決まるのかもしれない。

(撮影:風間仁一郎)

「週刊東洋経済」9月5日号〈8月31日発売〉の「買いますか 買いませんか 日本郵政株」も合わせてお読みください。

 

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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