家族の負担も費用も減らせる! 介護を乗り切るリハビリの力

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2007年12月の朝、脳出血に倒れた森浩三さん(仮名、65)は、発症から4年が経った今も、継続的にリハビリテーションに励んでいる。毎週月、水、金曜日は通所リハビリに通い、木曜日は自宅に理学療法士が訪れる訪問リハビリ。それ以外の日は復習の時間だ。自主トレにも精を出す。

両手両足のまひは完全に回復したわけではないが、両足で車いすを動かして自在に移動できるし、着替えも一人でできる。自宅には手すりを取り付け、トイレも自分でできるようになった。「倒れてからさんざん妻に心配をかけました。もう決してこれ以上苦労はさせられない。せめて自分のことは自分でやらないと」。森さんは涙ながらにそう語った。

全国デイ・ケア連絡協議会の会長で、霞ヶ関南病院(埼玉県川越市)の斉藤正身理事長は、「リハビリは、本人のQOL(生活の質)を上げることができる。だがそれだけではない。介護者である家族のためにも必要なこと」と断言する。リハビリによって本人の心身機能が上がれば、家族の介護負担は大幅に減る。そして、結果的に介護費用も軽減できるというわけだ。

医療保険制度の診療報酬は、2年に一度改定されている。一方、介護保険の介護報酬改定は3年に一度。リハビリは医療にも介護にもかかわる分野だ。6年に一度の同時改定となる12年は、リハビリを取り巻く仕組みが大きく変わるタイミング。そこで注目されているのが「リハビリ前置」の考え方だ。

6年に一度の同時改定 リハビリ充実化の議論

「リハビリ前置」は、実は00年に介護保険が発足した当初から唱えられていた。高齢者の心身機能が低下したときは、まずリハビリによって自立度を高め、それでも改善できない生活障害に対して介護保険サービスを提供するというものだ。

ところが実際に制度が始まってみると、低下した心身機能に合わせてサービスが提供されるだけ。それではますます活動量が落ち、機能はさらに低下、要介護度は上がる一方だ。初台リハビリテーション病院(東京都渋谷区)の石川誠理事長は、「自立支援の保険であるべきところが、単なる“お世話の保険”になっている面がある」と指摘する。


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