【産業天気図・通信業】番号ポータビリティで携帯のシェア伸ばすau。固定系ブロードバンドはNTT優勢

2006年下期は通信業界、特に携帯電話事業者にとって最大のイベントシーズンともいえる。携帯電話の契約者が9000万を超し、市場の伸びはかなり鈍化してきた。しかし、10月24日から始まる番号ポータビリティ制度(携帯会社を変えても電話番号を持ち運べる)によって、顧客の流動化が例年以上に期待されるからだ。つまり、今年は上乗せがなくても他社から顧客を奪い取ることでシェアアップを図ることができる。
 この番号ポータビリティに照準を合わせて大幅なシェアアップを目指しているのが、国内携帯電話市場でNTTドコモ<9437.東証>に次いで2位のau(KDDI<9433.東証>)だ。同社はシェア約26%で、番号ポータビリティで勢いを強め、シェア3割到達を狙っている。通常なら秋に行う新端末の発表会を8月下旬に敢行。実に12機種もの新端末投入を発表した。CMなど販促費も積極的に投入して顧客の取り込みに経営資源を集中している。シェアが5割を超すNTTドコモは静観の構え。シェアが大きいだけに番号ポータビリティをあまり宣伝すると、自らの顧客を外に出す逆効果を生みかねない。料金施策などでも、auが先行して打ち出したものにすかさず追随する作戦を取っている。
 不気味な存在は、今年3月に業界3位のボーダフォン買収を発表し、業界を驚かせたソフトバンク<9984.東証>だ。固定系のブロードバンドサービスでは2001年から激安のADSLサービス「ヤフーBB」を立ち上げ、今では会員数が500万を突破。NTT<9432.東証>が当時推し進めていた光ファイバーによるブロードバンド拡大戦略を駆逐した実績がある。これまで携帯電話戦略について一切口にしなかったソフトバンクは9月28日に新端末と新サービスを発表する。価格戦略を含め、どこまでインパクトのあるものを打ち出してくるかがポイントだ。10月に入るとNTTドコモも番号ポータビリティ対策で新端末を発表する見込みで、携帯電話業界の戦いはさらに熾烈になる。
 ただ、07年上期になると、携帯電話での熾烈な顧客争奪戦が一服すると見られ、市場環境はかなりクールダウンしそうだ。

◆固定系ブロードバンドではKDDIに遅れ

携帯電話で熾烈な争いがある一方、固定系のブロードバンド市場はNTTグループが推し進める光ファイバーによるネットサービス「Bフレッツ」の独壇場となっている。携帯電話に経営資源を集中するソフトバンクにとって固定系の「ヤフーBB」は、ほぼ現状維持、もしくは微増止まりがやっと。「NTTの対抗軸を作る」(KDDIの小野寺正社長)として東京電力<9501.東証>と個人向け光ファイバーサービスの連携を昨年決めたKDDIは、ようやくこの9月に東電のサービス統合方針を正式に決める段階であり、NTTの勢いを止める一大勢力にはなり得ていない状態にある。ただ「Bフレッツ」で好調なNTTは9月19日に「ひかり電話」で不具合が発生。原因不明のまま3日連続で通信量の制御を行った。不具合の原因が解明されない中でもNTTは「ひかり電話」の新規契約獲得を進める方針だ。仮に再度の不具合が発生すると光サービスの拡大にブレーキが掛かる可能性が高い。
【井下健悟記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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