「住宅ローンの頭金は多いほどよい」説のウソ じつは多様な選択肢がある

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一生に一度の買い物、いろんな選択肢を検討しましょう(写真:jazzman / PIXTA)

東京カンテイによると首都圏における7月の中古マンション価格は、前年同月比8.6%の上昇、東京に限れば12.7%の上昇と、大きな伸びを示した。ファイナンシャルプランナー(FP)として日々住宅購入の相談を受けている実感では、都内でそれなりに便利な場所にファミリー向けの新築マンションを買おうとすると、5000万円以下の物件はほとんど見当たらなくなってきたように思う。最近では「マンションと一軒家の価格差はほとんどなくなってきた」という話も聞く。

念願のマイホームを現金一括で購入できる人は少ない。大多数の人は最長35年の住宅ローンを組み、コツコツと返済していく。その住宅ローンでよくいわれるのが、「頭金はとにかくたくさん入れなければならない」「購入価格の2割以上を用意するのが常識」などという話だ。

確かに頭金を多く入れれば、その分だけ借入額が減り、利息負担は減る。つまり得をする。ただし、この俗説は必ずしも真理を突いていない。そこで、ファイナンシャルプランナー(FP)ですら正確に理解している人が少ない「住宅ローンの頭金と繰り上げ返済」の意外な関係をお伝えしたい。これからローンでの住宅購入を検討している人はもちろん、すでに家を買って繰り上げ返済を考えている人にも参考になるはずだ。

頭金は住宅ローンを組む時にしか払うことができない1回きりの特別なモノ、ということで限界まで払おうとする人が少なくないが、これは多くの人が誤解している。じつは繰り上げ返済でも代用できる。なぜなら頭金の性質は「返済0カ月目の繰り上げ返済」とまったく同じだからだ。

頭金は少なくてもよい

極端な説明をすれば、頭金0円でローンを組み、返済開始から1カ月後に400万円の繰り上げ返済をすれば、実質的に頭金400万円でローンを組んだ状況とほとんど支払い額に変わりはない。それに、繰り上げ返済は数年程度先送りをしても効果はさほど小さくならない。筆者はFPとしての住宅購入に関するアドバイスでも、「頭金は少なくてもよい」「頭金は1割でよい」と伝えている。頭金を減らしてライフプランの波を乗り越えてから残しておいた資金で繰り上げ返済をすると、資金繰りと利息の軽減を両立できる。

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