一流の人ほど実はしっかり休暇を取っている 「リフレッシュ」が仕事にもたらす効果

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ドミニク・グリョは元検事で現在は民事訴訟専門の弁護士をしている。ウエイトトレーニングや武道、ボクシングを長年やっているおかげで、肩幅は広く、四角いあごをしている。6年前に仏教に改宗した。

今では1日に5〜30分、瞑想を行っている。「以前は運転中にいらいらすることが多かったが、どんなにいらだったところで先に進めるわけではない」と彼は言う。「(瞑想は)私の力になってくれた。難しい問題が起きても、そのときはそのときだ。対処して前進するだけだ」

検事時代と違って民事訴訟を扱う今は、期限は厳しく判事も寛容ではない。そんな中、瞑想のおかげで辛い状況も前向きに受け止められるという。

ボクシングでも瞑想でも完全な精神の集中がかなりの時間にわたって必要となるから、もっと手っ取り早いリラックス法でよしとする場合もあるだろう。香水メーカー「シムライズ」のローナ・ストコルズ副社長(高級フレグランス担当)は、マンハッタンに新社屋を建設する際、何の香りも漂っていない締め切られた空間を作ることを提案した。調香に携わる人々の鼻を休ませるためだ。

「1日中香りをかいでいる人たちの憩いの場だ」とストコルズは言う。「鼻は脳に直結している。それをすっきりさせるには、ここに来てくつろげばいい。私たちが香りをかぐのは生活のためだ」

社員がここでくつろぐのはたいてい、10〜15分程度。以前の社屋では、香りから逃げるのにマンハッタンの臭い街路に出るしかなかったが、今ではそんなことをする人はいなくなったとストコルズは言う。

大所高所からものが見えるように

女優兼モデルのアナステイジア・ガーベイは会社人間の味わうプレッシャーとは無縁だが、きちんとした仕事をもらえるかいつも不安にかられているという。そこでガーベイが編み出したリフレッシュ法は、瞑想と鍼治療、吸い玉療法に、月に1度の予約専門スパ、それに最近ではマイナス160度の冷気に当たる寒冷療法の組み合わせだ。

冷気に当たるのがたった3分で、あとはエアロバイクでウォーミングアップする時間しか必要ないものの、費用は1回につき90ドルもかかるという。ガーベイは週に3回通っている。「最初にやったときは自分の名前も思い出せなかった」とガーベイは言う。「あまりに寒くて何も考えられなくなる」

これは仕事関係のトラブルを忘れる方法としては極端かもしれない。だがリフレッシュの時間に問題は起きていないのだろうか。

冒頭のヒットの例で言えば、彼がいないときも会社はうまくいっている。「私の不在に関して(会社に)マイナスの影響はまったくない。たいていのCEOはそんなことは言いたがらないだろうが」とヒットは言う。「(休暇から)戻ってくると、大所高所からものを見られるようになっている。ただし次の休暇までの数カ月でそうした視点は消えてしまう」

グリョによれば、瞑想にかかる費用は勉強のために買う本代くらいのものだが、ボクシングジムとスポーツクラブの会費は年に数千ドルに上る。もっとも自宅と法律事務所と裁判所を行ったり来たりする忙しい生活のなかで、初めはリフレッシュに使う時間がもったいなく思えたこともあったという。

「仕事時間が食われてしまうという人もいるかもしれない」と彼は言う。「それは正しくもあり、間違ってもいる。そのおかげで生産性がぐっと上がるからだ。全体的に見て、私は以前よりもずっと幸せになった。これまで生きてきたなかで今がいちばん幸せだ」

(執筆:Paul Sullivan記者、翻訳:村井裕美)

© 2015 New York Times News Service

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