【産業天気図・鉄道/バス】関東圏、非関東圏で“明暗”あるが、総じて利益高水準続く

鉄道業界は地域的には明暗を織り交ぜながら、基本的には収益高水準の「晴れ」が続きそうだ。
 私鉄大手14社(非上場の西武ホールディングスを除く)の今07年3月期第1四半期(4~6月)は、売上高1兆6889億円(前年同期比1.3%減)、営業利益1478億円(同1.7%減)、経常利益1239億円(同4.6%増)、四半期利益748億円(同8.5%増)だった。鉄道・バス、不動産、流通、サービス・レジャーを主要な柱とする鉄道業界は、売上高についてはそれほど季節性は強くないが、利益は大黒柱である鉄道で除却費、修繕費などの費用が後ろ倒しになる傾向があるため、第1四半期は重視されない。それでも今回は、関東7社が売上高から四半期利益までのすべてで前年同期比プラス(うち増収3社)であったのに対し、関西5社、名古屋、北部九州の非関東7社はすべてマイナス(同1社)となり、一種“明暗”を分けた。
 売上高では近畿日本鉄道<9041.東証>、名古屋鉄道<9048.東証>、京阪電気鉄道<9045.東証>、京浜急行電鉄<9006.東証>の4社が5%を超える減収だったが、近鉄・名鉄の2社は鉄道・バス、流通で愛知万博特需の反動、春先の天候不順が影響。京阪・京急は前期に大型不動産販売があった反動減が響いた。また、阪急ホールディングス<9042.東証>はJR西日本(西日本旅客鉄道)<9021.東証>の福知山線大事故に伴う振り替え輸送特需の反落が減収の一因だった。
 関東7社の営業利益は前年同期比3.4%増。その主因は、東京急行電鉄<9005.東証>が同16.3%増となったためだが、東急は第2四半期(7月)に大きな除却損が発生している。逆に、京急の第1四半期大減益は安全投資を同四半期に前倒ししたためだ。2社の“明暗”は費用計上が工事完成時期に左右される鉄道事業の収益体質を如実に示す形となった。ただ、減損損失の計上やそれに伴う利益捻出(主に不動産販売)の振れの影響が一部残ってはいるが、四半期利益が14社合計で8.5%増益だったのは、まずまずの水準と言えるだろう。
 私鉄各社は第1四半期を終えた時点では通期業績予想を変えないが、『会社四季報』では東武鉄道<9001.東証>、相模鉄道<9003.東証>、東急、京王電鉄<9008.東証>、京成電鉄<9009.東証>の5社について、通期営業利益を合計75億円増額した。関東圏の私鉄は東急、小田急電鉄<9007.東証>、京王、京急で輸送人員の小幅増加が続いており、収益基調は堅調だ。期初見通しが保守的であることが第1四半期で確認されたことで5社については増額(4社は減益幅縮小)した。また、特殊要因だが、阪急は阪神電鉄<9043.東証>を第2四半期から子会社化し連結したため、「阪急の通期+阪神の第1四半期」と両社の通期期初予想の合計の差から、営業利益予想を21億円減額した。
 この2要因から修正した今07年3月期の13社合計の『四季報』見通しは、売上高7兆1784億円(前期比0.1%減・期初予想比0.2%減)、営業利益5155億円(同5.3%減・同6.3%減)、経常利益4045億円(同6.2%減・同7.4%減)、純益2356億円(同18.1%増・同16.9%増)となった。これに基づいて、第1四半期の対通期予想進捗率を見ると、売上高の23.5%はほぼ前期並み、営業利益は28.7%で経常利益ともども前期より高く、通期の「営業減益」予想は変わらないとしても、もう一段の増額は可能性がありそうだ。
 非関東圏では輸送人員の減少、愛知万博特需の反動などで収益にやや低迷感が見られるが、関東圏では雇用情勢の好転に伴う定期の輸送人員増や個人消費の回復による流通の堅調から、今期および来期前半までを見たときには高水準の利益が予想される。
 長かったバブル崩壊に伴うグループ再編は前期までにほぼ終わり、今期は人口減少社会に対応する戦略である沿線価値向上に向け、各社は対応を強めている。東急の二子玉川、たまプラーザ、渋谷再開発や、東武の新東京タワー関連再開発、京急の横浜、品川再開発など収益への貢献は将来のことながら、注目される動きが続いている。
【中川和彦記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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