村上ファンド「復帰初戦敗北」で次の一手は? 黒田電気経営陣との戦いは長期戦に

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村上世彰氏は株主総会に姿を見せなかった(写真は2006年のもの、撮影:尾形文繁)

株主総会では、まず村上氏側と会社側がそれぞれ意見表明をした後に質疑応答が行われた。

出席していた株主によると、「最初に話した事は、両陣営ともに事前に文章で出していた主張とほぼ同じ。村上氏側の意見表明は絢さんがすべて話していた。緊張している様子はなく、落ち着いて話していた」という。

質疑応答の時間で行われた質問は全部で18問。村上氏側から会社側への質問はなく、質問は一般株主から両陣営に対して行われた。会社側への質問は資本政策や業界再編、そして黒田電気が2012年に発行し、絢氏が公表文書で「資本政策上の失策」と批判していた転換社債についての質問が中心だったようだ。

村上氏側へは、新任取締役候補者の就任目的、就任後の経営方針などの質問が行われたという。質問に対しては、すべて絢氏が答えていたようだ。「会社は事前に用意した形式張ったものだったが、絢氏側も事前に準備した回答を出しただけという印象だった」(別の株主)。

その後に行われた採決で、株主提案は反対多数で否決された。定時株主総会の倍以上となる120分を費やした株主総会は、黒田電気側の勝利で終わった。「まだ集計途中なので正確な数字はわかっていないが、反対が60%、賛成が40%くらいの比率。4名の候補者間で賛成率に大きな違いはなかった」(村橋執行役員)という。

接戦を演出した議決権行使助言会社

敗れたとはいえ、40%と村上氏側の得票率は半数にせまる。自分たちが保有している約16%を差し引くと、約24%の賛成票が集まった。その大きな力になったのが、議決権行使助言会社の存在だ。今回、業界2位の米グラスルイスは今回の新任取締役候補者4人全員に対して就任反対を表明しているが、業界1位の米ISSは全員に賛成している。

実は、同様の構図は6月に行われた定時株主総会でも起きている。この時は補欠社外取締役に斎藤輝夫氏が選任された。 斎藤氏の補欠社外取締役就任に対してISS側は「反対」、グラスルイス側は「賛成」だった。その結果、斎藤氏への賛成率はほかの候補に比べて約14%低かった。今回賛成票を投じた24%の一般株主にも、助言会社の影響が少なからずあるとみられる。

一方、村上氏側が期待していた外国人投資家の切り崩しは、思ったようにはいかなかった。黒田電気の株主構成を見ると、40%以上は外国人投資家。特に約14%を保有する第2位株主、シュローダー・インベストメント・マネジメントがどちらに味方するかが焦点となっていた。

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