しまむらは、世界の先例に何も学ばなかった 「鉤十字」マーク品はなぜ販売中止になったか

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諸外国では、自身の宗教や文化が隣人と異なるため、ちょっとした違いが大問題となるケースがある。日本企業もグローバルに展開するなか、これまで以上に注意が必要だ。そのほか、代表的なものを取り上げておく。

ギャップは先住民をないがしろにしたのか

たとえばギャップ(GAP)だ。ギャップといえば、日本ではユニクロとおなじファストファッションの代表格と思われている。銀座そして表参道の店は筆者もよく利用する。どちらかというと、まじめでおとなしい、ベーシックな衣料を販売するイメージがある。

しかし、同社が2012年に、Tシャツをめぐって大批判をうけたと知る日本人はほとんどいない。というのも、日本語のニュースでは、ほとんど報じられなかったからだ。

それは黒地に「Manifest Destiny」と白文字で書かれたTシャツだった。うむ、たしかに、このフレーズを聞いて、何が問題なのかわかる日本人はほとんどいないだろう(だからニュース価値がなかったともいえる)。「明らかなる運命」? この「Manifest Destiny」とは、アメリカ西部の開拓を正当化したフレーズだった。つまり、白人の西部開拓時代とは、神が与えた運命であるとしたのものだった。

この「Manifest Destiny」が与えたショックは測りがたい。ネイティブの虐殺や抑圧、そして信じられない人権侵害を、まるでギャップは認めたかのようだった。当然ながら、少なからぬひとたちはギャップの不買運動を起こしたり、あるいはネット上で批判活動をくりひろげたりした。

これも「Manifest Destiny」「GAP」などと検索いただければ多くのニュースを読むことができる。私見では、やはり先住民たちへの配慮を欠いた商品だったと言わざるをえない。私はかならずしもリベラルな抗議行動を是としないものの、やはり祖先が虐殺された哀しみは消し難い(なお、ZARAは2014年に「WHITE IS NEW BLACK」という意味深なTシャツを発売し、これまた人種差別的だと批判をあびた。この騒ぎも、まだ世の中に横たわる人種間の径庭を示している。すくなくとも日本メーカーにおいて、意図的で挑戦的ならともかく世界が敏感なワードを使う際には注意が必要だろう)。

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