広島カープは最高の「地方再生モデル」だった 「カープ女子」という言葉に隠された真実

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地方再生でいつも問題になる横並び意識の、まさに「180度逆を行く戦略」で、広島という独自性を打ち出してなおかつ当事者意識を持たせることで成り立っているコンセプトです。天から降ってくる税金を当てにしているビジネスモデルとは対極なのです。

何せ自分たちのカネを突っ込んでやっているんですから。

株主だけではありません。カープは度重なる経営不振を経験し、その度に市民が募金をして球団を支えてきた、という歴史があります(たる募金)。

事あるたびに、「あの時オレが募金をしたからこそ、今の球団がある」という思いが市民の中にあり、それをみんなで共有しているというのは実に強いビジネスです。何せ自分の球団ですから、ちょっとやそっとで売り上げが落ちることはないわけです。もちろん、球団として市民の期待に応える必要がありますが、それがあのカープのハッスルプレーに表れている、と言っても良いと思います。

選手の全力プレーを見せるのが基本のビジネスモデル

カープの野球を見て頂くと、まず、全力疾走をしない選手は1人もいません。40歳を超えている元ホームラン王であるベテランの新井選手でさえ、どんな当たりでも一塁に向かって全力疾走します。

カープの試合を見慣れてしまうと他球団の選手の怠慢なプレーに目を覆いたくなるようなことが多々あります。カープの選手は、勝敗は別にしても、球場に足を運んで頂いたファンのためには全力プレーで答えるというのが球団の伝統なのです。そして、「勝っても負けてもそれを見に応援に来て、喜んで帰る」というのが広島における野球観戦の姿です。

もちろん勝てばそれに越したことはないわけですが、野球は優勝したとしても勝率にすればせいぜい6割のスポーツ。逆に言えばたとえ見に行ったとしても2回に1回は負けてしまう可能性がある、と考えると、勝率を維持することで売り上げを維持することはビジネス上かなり厳しい。どこかの球団のように大金をはたいて選手をかき集めてくる以外に手はないことになります。

しかし、選手の全力プレーならいつでも見せることができると考えると、このビジネスモデルはかなり優秀ではないでしょうか。まさに「出資者」に応える企業としての姿勢が徹底しているのです。

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