アメリカは極右イスラエルをどうするのか イランと欧米諸国の核合意がもたらすもの

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ネタニヤフ政権の攻撃的姿勢は以前から明らかですが、実際には先制攻撃のような事態は起こらないでしょう。オバマ政権のアメリカがイスラエルによる攻撃を支持していないからです。

6カ国とイランとの間で、核問題についての最終合意がなされた今の段階で、戦争を起こしたがっているのは、ロシアのほかにはイスラエルだけです。欧州各国およびオバマ政権は、「ネタニヤフは中東で新たな戦争を始めようとする危険人物である」としか見ていません。

アメリカはネタニヤフ政権を見放す可能性も

イスラエル国民が懸念すべきは、ネタニヤフ首相の発言に対して、欧米社会ではアメリカの共和党の一部の議員以外、誰も耳を傾けていないという事実です。親イスラエルのユダヤ系アメリカ人も、全員がイランとの和解に反対しているわけではありません。ネタニヤフがあくまでイラン攻撃を主張するなら、アメリカは現政権を見放すことになるでしょう。

アメリカがイスラエルの懐柔に失敗したら、おそらくネタニヤフ政権は崩壊するだろうと、私は予想しています。120議席のうち61議席しか持っていないということは、どこかひとつの政党をひっくり返すだけで与野党が逆転してしまうことになるからです。イスラエル経済はかなり疲弊しているので、アメリカ政府がその気になれば、政局をひっくり返すことは簡単にできるでしょう。

もともとイスラエルは、アメリカにとって中東における強力な手駒のひとつです。ネタニヤフ政権が崩壊して、新しい政権が中東の安定のために妥協してくれるのであれば、アメリカにとってそれがベストな選択肢となるはずです。

なお、新刊『石油とマネーの新・世界覇権図 ~アメリカの中東戦略で世界は激変する』(ダイヤモンド社)が発売されました。

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このたびの新刊では、歴史的な背景をひもときながら、以上の疑問にわかりやすくお答えしています。もし興味がございましたら、ぜひご覧ください。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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